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週刊 IT ニュース&コラム 2002/07/29
GIFに続き、JPEGにも特許を主張する企業が今頃登場

2002年 7月11日、Forgent Networks社は、JPEGに関する基本特許 ライセンスを主張した。

JPEGは、デジタルカメラやブラウザを中心に標準的に使われている 静止画圧縮技術で、広まってから10年以上経っている。

以前にも似たような話が GIFという画像フォーマットに関してあった。 GIFに含まれる LZWという圧縮技術の特許をアメリカUnisys社が 主張したのだ。これにより、GIF関連のフリーのツールが激減した。 JPEGも同様にツールが激減する可能性が出てきた。

ビデオ・ネットワーク関連メーカーである Forgent社は、デバイス メーカーに対してライセンス料の支払いを求めていくというが、 半導体不況の中、メーカー同士が足の引っ張り合いをしているように 見える。

しかし、6月10日の発表によると、ソニーとライセンス契約を 結んだという。つまり、ソニーが特許を認めたため、同社の 影響力が大きくなり、今回の主張になったのだろう。

JPEGを開発したJPEG委員会では、JPEGをライセンスフリーの 技術として公開している。そのため、JPEG委員会にライセンス料を 支払う義務は無いのだが、開発した技術の中に偶然特許にかかる 技術が同時に開発されたのだろうと思うのだが、特許には、 そういった横取り的なことが認められている。極端に言えば、 誰でも考え付くものでも先に発表したものの勝ちである。

JPEG委員会によると、今回注目されている技術は、ランレングス 符号化に関連するものと想定されている。ランレングス符号化は、 連続した0の値を長さで表現して圧縮するという、誰でも思いつく 圧縮の基本技術である。もちろん、誰でも思いつく技術は特許局も 認めないので、さらにひと工夫された技術なのだろうが、 Amazon社のワンクリック特許など時々簡単な技術も認められる。

発明者は、JPEGの基本技術である FDCT(高速離散コサイン変換) の発明で有名な Chen Wen-hsiung氏。Compression Labs 社の 特許であるが、Forgent社が1997年に買収して活動に出た。

アメリカの場合、特許に登録されていなくても先行技術があると 認められれば、そちらに特許の権利が移る。そのため、JPEG委員会 では、先行技術があることが推測されるとして、情報収集を していき、2002年10月の会合で報告する予定だ。

アメリカの特許の期限は20年であり、あと4年近くある。 ちなみに、GIFのLZWの特許の期限は、来年2003年の6月19日。 あと1年を切っている。

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週刊 IT ニュース&コラム 2002/07/22
日立が水冷式ノートを発売、ファンが無いため非常に静か

2002年 7月17日、日立製作所は、水を使って冷やすノート型パソコン 「FLORA 270Wサイレントモデル」を 9月末に発売すると発表した。

Pentium4 の世代になって、CPUの発熱量が非常に大きくなってきている。 そのため、ノートパソコンに Pentium4 を搭載することが難しく なってきている。最近になって、モバイルPentium4-M が発売されて、 ノートパソコンにも搭載されるようになってきたが、依然として 発熱量は非常に大きい。

ノートパソコンには、放熱のための対策が様々考えられてきた。 最も簡単な対策は、ファンをつけることだ。 そして、ファンを効率よく するために、風通しをよくしている。ファン自体も騒音を小さくしたり、 消費電力を抑えるために、ベアリングを搭載したりしている。 しかし、これまでの方法は、どれも空冷方式だった。

今回の日立のノートはこれまでにない水冷式だ。実はバイクの冷却方式も 空冷から水冷に移った歴史があり、同じような問題に対応した。水冷に するときの問題は、いかに水を漏らさないようにすること、そして熱源から 遠く、風通しのよいところにどのように水を運んで循環させるかが 課題となる。今回は、2万回以上の折り曲げに耐えられるチューブや超小型 遠心ポンプを採用し、液漏れ対策を施しての登場となった。

水冷式にしたことにより、ファンは内蔵していない。そのため、 図書館並みの静かさを実現している。水を循環させるために モーターは付いているが、それほどうるさくないようだ。 CPUから受け取った熱は、ディスプレイの裏に回って、そこの放熱板で 冷却する。

非常に画期的なのだが新しい技術なので重たいという問題がある。 もっとも大きなA4サイズで、重さは 3.75kgもある。それ以外は、 標準的。駆動時間は、2.5時間。搭載CPUは、最速の Pentium4ではなく、 モバイルPentium4-M 1.8GHzだ。しかし、Pentium4 をガンガン回しながら、 静かというのは、魅力的だろう。

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週刊 IT ニュース&コラム 2002/07/15
日本初のフリーソフト非営利団体フリーソフトイニシアティブを設立

2002年 7月10日、フリーソフトイニシアティブ(FSIJ:The Free Software Initiative of Japan)という特定非営利活動法人(NPO) の設立を発表した。日本でも、フリーソフトはある程度認知されて いるが、公式な団体という形をとったものは、日本初である。

理事長である青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授で 工学博士の井田昌之氏によると、「3年の準備期間を経て設立に 至り、FSIJが、日本の代表的な組織になることを目指し、 その活動をリードし、連携の手伝いができるようにしたいと 思っている」と発言されている。ちなみに、井田氏は、「COMMON LISP」、「GNU Emacsリファレンスマニュアル」の監訳をなされて いる。

日本でようやく公式な団体ができたのだが、井田氏の発言には、 疑問点がいくつかある。「一般的にソフトウェアは、市場において 売買される工業製品としてのみとらえられている」と発言されて いるが、そうだろうか。「今まで日本では、フリーソフトウェアを まとめて発信する場がない」というが、ベクターや窓の杜などがある。 アメリカほどではないが、商用の製品を脅かすほどの、ソフトウェア (無料ではないが企業によるものではないもの)もある。 フリーソフトに興味のある方には、多くの本やインターネット からもはや常識となっているため、フリーソフトに関する啓蒙活動に 意味を持たないと考えるだろう。

しかし、本当に世間一般に認知されているのだろうか。友人に 薦められたソフトウェアが、商用製品ではないかもしれないことに 気づいている人は多いだろうか。買ったときにプリインストール されているソフトウェアが、元々非商用で開発されたものであった ことを知っているひとがいるだろうか。

また、一般の人にもこういった非営利活動(ボランティア、または、 自分の好きなことをやって、たまたま社会に還元できること) があることを認知させることには、意味があると思う。井田氏の発言 のように、「隣に行って醤油を借りてくるように、政府と企業の他の 第3の存在も社会を支えている」こと、つまり、お金がすべてではない ということを啓蒙することに意味があると思う。きっちりとした お金や契約は必要だが、それだけの社会で成功するより、それが ない部分を持った柔軟な社会のほうがいいと思う。

フリーソフトの話題では、必ず来るのがフリーソフトの定義である。 英語では free の意味がいろいろ使えるために混乱している。 日本では無料ソフトという意味であるのに、あえて間違っていると 啓蒙する意味はあるのだろうか。別の日本語を与えて正しい啓蒙を した方がいいと思う。日本の団体が、あえて先駆者に敬意を払って フリーソフトという用語を使って、外国の混乱を持ち込むより、 無料ソフトと共有ソフト(コモンソフトのようなそれらしいカタカナ語) を使って速やかに目的を達成した方がいいと思う。

ただ、私の印象では、フリーソフトといえば、LinuxやGNU関連のみで、 海外から輸入したものしか取り扱っていない気がする。そのため、 日本では、開発者より翻訳者の方が有名であることもある。開発者の 絶対数が少ないこともあるが、せっかく日本で NPO を取ったのだから、 もっと日本について紹介して欲しいものである。

FSIJ はホームページも開設している。ただ、伺えばわかるが、 いまいち情熱を感じない。大学の堅い研究会のような感じだ。 もっと活動内容が見えてきたら、私も含め、多くの方が賛同すると思う。

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週刊 IT ニュース&コラム 2002/07/08
ホットスポット競争に無線LANの大手メルコが参戦

2002年 7月2日、BUFFALOブランドで有名な無線LANの大手、 メルコは、喫茶店などに無線インターネット環境を 提供するサービスのソリューション「FREE SPOT」を発表した。

ユキビタス・ネットワークの実現に向けて、各施設のインター ネット・アクセスポイント「ホットスポット」の設置競争が 激化している。Yahoo! BB モバイルや、Genuineや、Hi-FIBE などがそれだ。 接続業者にとっては、どれだけ設置できるかが 収入源の大小に関わってくるためだ。

ただ、これまでのホットスポットは、ユーザに月額使用料を 徴収する場合が多かったのだが、メルコの「FREE SPOT」 では、ユーザは無料で接続することができるのが特徴。

その代わり、ホットスポットを提供する施設が利用料金を 支払う。 ログインを必要としないなどのコストダウンにより、 喫茶店や理髪店などにある新聞のサービスと同程度の料金に なっているのも、普及を加速させる要素となっている。

問題は、ノートパソコンやPDAをユーザまたは施設が用意する 必要があることだ。これは他の接続業者によるホットスポット にも言える問題だが、あまりに利用者が少ないと、施設側が 取りやめてしまう可能性がある。

ノートパソコンやPDAを活用するビジネスマンがよく入る施設で あればホットスポットさえ設置すれば活用できるだろうが、 休日に訪れる施設では、インターネットカフェと同等の設備が 必要となるだろう。

携帯電話のホットスポットであれば、すでに導入している店も あるが、携帯電話のインターネットは長時間リラックスできる ほどのコンテンツは無く、通話向けのサービスと言っていいだろう。 それに、通信料が高いので、ユキビタスとはいえるほど気軽に 利用するわけにはいかないだろう。

無線LANが使えるPDAが安くなり、施設側で用意できるようになれば、 新聞に取って代わる日も来るだろう。ただ、今度は、PDAが盗まれ ないようなセキュリティが必要となる。ユキビタスの実現には、 まだ問題が多いようだ。

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週刊 IT ニュース&コラム 2002/07/01
マイクロソフト、開発中のセキュリティプログラムを公開

2002年 6月24日、マイクロソフトは、セキュリティ機能を持った チップをパソコンに組み込むプロジェクト・コードネーム 「Palladium」のソースコードを公開する計画があることを 発表した。

Palladium は、CPU に埋め込まれるセキュリティ・チップを 使って、パソコンの一部に、外部から攻撃を受け付けない 領域を作って、セキュリティーの強化をするという。 ただ、同じような考えは、すでに Windows に組み込まれている。 Windows フォルダの保護機能がそれだ。

ただ、Windows フォルダを破壊するウィルスが存在している ため、完全なセキュリティではない。そこで、ハードウェアの 力を借りてより強力にするのだろう。

ハードウェアを使ったセキュリティは、USB メモリなど、 すでに多く開発されてきており、新しい考え方ではない。 このため、Palladium の目的は別にあると推測することもできる。 それは、Windows XP から導入されたプロダクト・アクティベー ションだ。これで Windows の海賊版を撲滅することが目的だろう。

同じようなことが以前にもあった。CPU に ID 番号を埋め 込まれた当初、その ID を使うことで、個々のパソコンに応じた 動きをするプログラムができると期待された。セキュリティも 向上されると期待された。 しかし、プロダクト・アクティベー ションに使われたり、プライバシーが侵害されると危惧されたため、 デフォルトの BIOS 設定では CPU の ID が使えないような 設定になっている。

ハードウェアを使ったセキュリティは、そのハードウェアを 複製しない限り、安全だ。 そのためかどうかは定かではないが、 マイクロソフトは、Palladium のソースコードを公開することを 決めた。

セキュリティのプログラムは、ソースコードを公開すると セキュリティが弱くなるといわれている。これは、どんな セキュリティ・システムにも一般に言えることだろう。 しかし、RSA というセキュリティ・プログラムは、ソース コードが公開されているにもかかわらず、現在でも十分に 実用に耐えている。これは、ランダムに作成された秘密鍵 さえ秘密にしていば、一定期間は、安全であることが数学的に 証明されているからである。

RSA に問題があるとすれば、秘密鍵が盗まれる可能性が あることだ。最近のセキュリティ・ホールの多くは、 セキュリティ・プログラムのコア(中心)から少し周りの プログラムにバグがあることが原因になっている。 そこで、プログラムの信頼性があがるように、オープンソース にしたというわけだ。 オープンソースであれば、多くの人が 制限なくチェックするようになり、バグが少なくなり、 安全性が増すというわけだ。

公開してバグを無くすか、非公開にしてハッカーに情報を 与えないか、どちらが優れているかは結論が出ていない。 どちらの方法もセキュリティが破られた経験がある。 ただ、マイクロソフト製品に不信感があるのは確かだ。 それを払拭するためにも公開したのだろう。 マイクロソフト製品を狙ったウィルスを開発する人は、 マイクロソフトを嫌っているものだ。少しでもそういった 人を減らそうというのが狙いだろう。

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