2001年 9月 19日、Internet Explorer 6 の日本語版が公開された。
今回のバージョンアップは、IE5 のときと同様、見た目に大きな変更は 無い。最も大きな変更は、P3P(Platform for Privacy Preferences) という W3C(World Wide Web Consortium) が開発したプライバシー 機能が追加されたことだ。P3P は、Cookie というブラウザの機能に 関する技術だ。
Cookie はオンライン・ショッピングのページでよく使われる。 オンライン・ショッピングのサイトに訪れて、何か購入するように 操作すると、カートにその商品が一時的に格納される場合がある。 そのカートの機能を実現するのに必要なのが Cookie だ。 ページに現在のカートに入っている商品の一覧が表示されるわけだが、 商品 A を購入する人、商品 B を購入する人、というように それぞれページ(URL)を分けているわけではない。 いろいろな組み合わせを考えると、いくつページを用意しても きりが無いからだ。そこで、Cookie という技術を用いて、 個人的な情報を参照しながらページを表示している。
しかし、その Cookie の情報は、ユーザが意識することなく、 ユーザのマシンにテキストファイルとして保存されている。 つまり、ショッピングサイトで購入する際に入力した電子メールや 住所や電話番号がいつのまにか保存されているわけである。 そして、悪意のあるサイトが Cookie ファイルを盗んで、 個人情報を盗んでしまうのである。
P3P は、サイトの管理者の情報やどのように情報を使用するか といった情報を示すプライバシー・ポリシーがあるかどうかを 確認して、悪意のあるサイトでは無いことを確認して、初めて Cookie の機能を使えるようにする。
試しに Microsoft のホームページに行って、メニューから [表示 | プライバシーレポート] を選択してみよう。そこで 表示される一番上の URL をクリックして、右下の「概要」 ボタンを押してみると、プライバシー・ポリシーが表示される。 その情報が疑わしいときは、URL ごとに Cookie を禁止するように 設定することもできる。P3P のプライバシー・ポリシーが 無いと自動的に Cookie を禁止するように設定することも できるが、デフォルトではそうなっていない。これは、 現在、P3P に対応しているサイトが、一部の大手プロバイダに 限られていて、楽天や Yahoo! などのショッピング・サイトでは 対応していないところが多いためだろう。
もう1つ大きな変更点は、メディア・バーが追加されたことだ。 WMA(Windows Media Audio) や WMV(Windows Media Video) 形式へのリンクをクリックすると、左側(エクスプローラ・バー) にメディア・プレイヤーが現れてそこに映像や再生状況を表示する。 別ウィンドウになっていないだけだが、多くのメディアへの リンクが多くあるページでの操作性が向上している。 MP3, MIDI にも対応しているが、Real 形式には対応していない。
BIGLOBE から提供されるバージョンの IE6 もある。この場合、 検索で Google エンジンを使った BIGLOBE サーチが使えるので良い 検索結果が期待できる。Google が提供している Google ツールバー とどちらが使いやすいかは好みによるだろう。
あと、細かい点でいくつか修正点がある。
Outlook もバージョン6 になり、I LOVE YOU ウィルスで有名に なった手口である、勝手にウィルス・メールを配布することが できないようになっている。BIGLOBE 版では、BIGLOBE の広告が 下に表示されているが、消すように設定することもできる。
以上、バージョン6の変更点を挙げたが、マイナー・バージョン・ アップである感じは否めない。セキュリティの問題の対策や、 メディアプレイヤーを付けただけで、新しい機能が全く無いのだ。 複数の様々なページを表示するユニバーサル・キャンパスが パーソナルバーとして搭載されると言われていただけに、魅力が なくなってしまった。
すでに、英語版をインストールしている人が多いだろうが、 日本語版も公開されたのでアップデートしてみてはいかがだろう。 フルインストールを選択してもダウンロードサイズは 12.5MB だ。
2001年 9月 11日、アメリカの繁栄の象徴、ワールドトレードセンター (ツインタワーの両棟)と、力の象徴、国防総省(ペンタゴン)に、 イスラム系テロリストの犯行と見られるハイジャックにより、旅客機が 建物に衝突炎上した。2機目の衝突は全世界に生放送され、映画のよう な衝撃的なシーンが放送された。続いて、ツインタワーは崩落。 タワー の中には、日本や世界の銀行や証券会社が入っており、多くの証券 エリートたちが命を落とした。ペンタゴンは五角形のうち一辺が崩壊 した。16日現在、ツインタワーのあるニューヨークの死者行方不明者は 約5000名、ペンタゴンのあるワシントンは約400名となっている。事件後、 マンハッタン島は進入禁止に、4日間全米の全空港の離着陸を禁止、 ニューヨーク証券取引所は約一週間閉鎖した。その間、世界的に マーケットは急落し、日経平均株価も、最後の砦といわれる1万円を あっさり割り込んだ。ブッシュ大統領は、「民主主義に対する挑戦だ」 と述べ、世界各国から賛同と協力を得、テロに対して徹底的に報復を すると宣言した。
主犯は国際テロリストのオサマ・ビン・ラディンと見られている。彼は イスラム原理主義を掲げ訓練組織アルケイダを形成し、湾岸戦争を機に アメリカに対してかつてない報復するだろうと予言していた。長い期間 アメリカに攻撃を加えられてきた多くのパレスチナ人は、この事件に 歓喜の声を上げた。
犯人は、アメリカでは機内に持ち込むことが許される小さなナイフで 犯行をしたという。脅されてもパイロットがビルに突っ込む真似は しないだろうから、犯人はナイフでパイロットからコックピットを奪っ たのだろう。4機も同時にハイジャックに成功してしまい、セキュリティ に問題があることが明らかになった。事件後は、ボディチェックが 強化され、オンラインでチケットを購入したときの手続きが増えること になった。
事件直後、回線電話や携帯電話はほぼ麻痺状態となり、電子メールや インスタントメッセージが頼りとなった。電子メールのトラフィック量は、 事件後1時間で平常時レベルに戻ったという。その特性を生かして、 米 Prodigy Communicationsは、安否の確認ができる無料 ASP サイト 「"I'm Okay" Message Center」を立ち上げた。CNN, MSNBC, ABCNews, FOXNews などのニュースサイトは、アクセスが集中してページを見る ことができなくなっていた。そこで、2時間後にテキストベースに なった。現地にいてもビルの外などの様子を知ることは困難である。 その情報を得るのに最も適したのは、ラジオであった。携帯のテレビが あればそれも役に立っただろう。ニュースサイトは、アクセスが集中した だけでなく、テレビやラジオに比べて更新が遅く情報も少なかった らしい。一方で、スラッシュドットなどのアンダーグランド的なサイト や、音楽やゲームなど、ニュースとは関係ない掲示板の方が、情報が 豊富であったという。一般人による写真やビデオもネットで公開されて いる。事件から数日たったテレビは、評論家のワンパターンな話が 多くなり、ネット上の一般人のコメントの方が優れていたことも多いという。
ハイジャック中の機内では、携帯電話で家族に知らせたり、犯人の 座席番号を知らせたりした。空軍のスクランブル発進もあったが、 間に合わなかったという。9月 7日には、韓国日本の米軍基地にテロ リストが事件を起こすだろうと警告していたが、まさか本国が狙われて いるとは思わなかったという。しかし、1993年にツインタワーで自爆 テロ活動が行われたことを考えると、「本国で起きることも考えられた、 冷戦時代の古い安全保障活動だ」と批判する記事もあった。しかし、 防衛予算の削減により情報機関の資金不足も明らかになっているので、 無理もある。ただ、今回の事件で国民の大多数の支持を得て、国会で 特別予算を組んだ。
NATO(北大西洋条約機構)では初の集団的自衛権を発動する許可を得た。 ビン・ラディン氏の本国であるアフガニスタンへ、報復行動を実行する ためには通り道であるパキスタンの協力が必要である。パキスタンでは、 テロの支持団体でもあるタリバンが国の主要団体であるのだが、 アメリカの協力に賛同しないのは国際的に孤立してしまうため、協力 することを約束した。アフガニスタンやパキスタンでは、国外脱出する 動きが活発になっている。しかし、テロの組織、テロの国際ネットワーク に対して効果的な攻撃を仕掛けるのは非常に難しい。報復攻撃に失敗し、 民間への被害が大きくなれば、国際世論を敵に回すことにもなる。 長期戦になるのは間違いないだろう。
湾岸戦争の世論は賛成が半分だったが、今回はほぼ8割強の支持を得て いる。しかし、この感情的な支持は、本格的な戦争になる引き金となる 可能性がある。アメリカ在住のイスラム教徒は、ネットでも実社会でも 激しい嫌がらせを受けたり、礼拝堂を放火させられたり、警備で施設に 入れなかったりする事件がおきている。自由の国でありながら、差別が あるのは、イスラム教の国から多く聞かれる反アメリカの理由と同じで ある。被害には同情するが、これまで散々攻撃をしてきたアメリカの 自業自得だというのが、イスラム教徒の本当の心情であろう。しかし、 イスラム教徒も負けてはいない。自爆テロを聖戦として正当化する サイトもある。もちろんテロを正当化するのはイスラム教徒でも一部の 過激な者だけだろうが。
イーバンクなどでは被害者義援金受付口座を開設しオンラインで募金が できる。しかし、赤十字を名乗って支援金をたかるスパムメールも流れ ているという。メールに書かれているアドレスに直接ジャンプするのは 危険だ。公式のホームページへ自ら訪れて寄付するといいだろう。 ウィルスメールも流れている。ツインタワーに関するオークションも 禁止となった。
暗号を使った情報のやりとりにより、軍の情報収集の妨げになったこと も予想できる。軍が事前にテロ活動を追跡できなかったことへの苛立ち と同時に、諜報機関がテロ活動を監視できるよう暗号にバックドアを 義務付ける動きも見られるようになった。
ツインタワーの崩壊により、ツインタワーにしかないデータは消えて しまった。もちろん証券取引の情報は別の場所にもバックアップを取っ ているため問題は無さそうだが、個人的に持っている情報は、無くなっ た可能性が高い。個人が損するだけなら被害も小さいが、重要な顧客 情報を持っているところは、バックアップが稼動しているシステムから 物理的に離れているところになければ、大変な責任問題に発展するだろう。
ニューヨーク証券取引所や大リーグは明日から再開される。国の機能も 徐々に戻りつつある。しかし、マンハッタン島の救助活動はまだ続いて おり、テロリストという新しい敵への対応もまだ不十分だ。株価も 急落するだろう。しかし、マイナスの局面から新たな需要を生み出す 底力がアメリカにはある。このまま世界経済が破綻することはないだ ろうが、厳しいことにも変わりないだろう。
2001年 9月 14日、任天堂は新型ゲーム機「ゲームキューブ」を 発売する。ニンテンドー64の次の世代で、PlayStation2 に 対抗する。
ゲームキューブは、開発コンセプトを公表している。 それは、クリエーターにクリエーティブな作業に集中できるように すること。ニンテンドー64は、高速なハードウェアであった代わりに、 非常に開発しづらいハードウェアであったという。 つまり、ゲームとして遊べるだけのパフォーマンスを出すために、 職人技的で小手先のチューニング作業が必要であった。 開発の約4割をチューニングに使っていたという話もある。
ハードウェアの性能は、通常、ピーク性能で示される。それは、 最もハードウェアに適した状態で動作させたときに発揮される 性能のことで、ゲームで使うときは、それほどの性能が出ない ということだ。たとえば、キャッシュ・メモリに入った状態での テクスチャ・マッピングの性能を知ったところで、それだけ 小さなテクスチャを扱うことはありえない。 小さなテクスチャに収まるようなチューニングが必要になる。
そこで、大容量の2次キャッシュと、1T-SRAM という 高速なメインメモリを使っている。1T-SRAM は、Windows アプリケーションに少なく、ゲームに多い、小さなデータの 頻繁なアクセスに対して、RDRAM よりも高速である。 元々、SRAM(Static RAM) は、一般的な DRAM(Dinamic RAM) より高速であるので、当然といえば当然なのだが。 メインメモリのほかに、補助メモリとして Aメモリがある。 これは、一般のシンクロナイズド DRAM が使われ、 オーディオ関係のバッファなどに使われる。 RAM に格納するデータも、S3社のテクスチャ圧縮技術 S3TC と、 任天堂独自の三次元座標圧縮技術(丸めによりビット数を減らす) により、より多くのデータをメモリに詰めることができる。
開発環境は、これまではシリコングラフィックス社の高価な ワークステーションが必要であったが、Pentium 1GHz 以下の PC でも十分に開発できるようになったという。ミドルウェアには、 三次元グラフィックスや、コントローラ読み込みなどがそろっている。 セガがファンタシースター・オンラインを1ヶ月で E3 という 米国のゲーム博覧会に展示できたのも、開発のしやすさを 物語っている。これは、多くのソフトがラインナップされる 可能性が高いということでもある。 下記のように性能を比較すると、ゲームキューブが見劣り しているが、いずれもピーク性能であるので判断は難しい。
Xbox GameCube PlayStation2 ---------+------------------------------------------------------------------ Processor PentiumIII 733MHz Gekko 485MHz EmotionEngine 295MHz Graphics Xchip 250MHz Flipper 162MHz GraphicsSynthesaizer 147MHz RAM 64MHz 24MB+16MB 38MB mem帯域幅 6.4GB/sec 2.6GB/sec 3.2GB/sec polygon 12500万/sec 実600〜1200万/sec 6600万/sec |
PlayStation2 でピーク性能を出すのは非常に難しいと聞く。 チューニングを駆使すれば、これまで発売されてきたような、 とてつもないグラフィックスを見せてくれるだろう。 しかし、ゲームキューブのグラフィックス性能は、PlayStation2 とそれほど劣るものではない。見た目には分からなぐらいの差なの かも知れない。ゲームキューブの方が、開発のしやすさから、 クリエーターのイメージをそのまま表現できるだろう。 今までとは別の次元の感動を届けてくれるかもしれない。
ゲームキューブは、演算担当の Power PC「Gekko」485MHz、 のアーキテクチャは、レンダリング担当の「Flipper」、 ビデオメモリ兼メインメモリの「Splash」という3チップ構成に なっており、仕様は次のとおり(任天堂ホームページより)。
Power PC "Gekko" 製造プロセス 0.18ミクロン 銅配線技術 動作周波数 485MHz CPU性能 1125DMips(Dhrystone2.1) 内部データ精度 32bit 整数 & 64bit 浮動小数点 外部バス バンド幅 1.3GB/秒(ピーク) 32bitアドレス、64bitデータバス 162MHz 内部キャッシュ L1: 命令32KB、データ32KB (8way) L2: 256KB (2way) システムLSI “Flipper” 製造プロセス 0.18ミクロン NEC DRAM混載 動作周波数 162MHz 混載フレームバッファ 約2MB 持続レイテンシ性能 6.2ns (1T-SRAM) 混載テクスチャキャッシュ 約1MB 持続レイテンシ性能 6.2ns (1T-SRAM) テクスチャReadバンド幅 10.4GB/秒 (ピーク) メインメモリ バンド幅 2.6GB/秒 (ピーク) ピクセル カラー & Zバッファ 各々24bit 画像処理機能 フォグ、サブピクセル アンチエイリアス、 光源演算ハード×8、アルファ・ブレンド、 バーチャル テクスチャ設計、 マルチ・テクスチャ/バンプ/環境マップ、 MIPMAP、Bilinear、Tri-linear、Anisotropicフィルタ、 テクスチャ データ リアルタイム解凍(S3TC)、 flicker除去 3ラインフィルタ演算ハード、 ディスプレイ・リスト リアルタイム解凍など サウンド (Flipper内蔵) 専用16bit-DSP DSP インストラクション メモリ 8KB RAM+8KB ROM DSP データ メモリ 8KB RAM+4KB ROM DSP 動作周波数 81MHz 同時発音数 ADPCM: 64ch サンプリング周波数 48KHz 浮動小数点演算システム性能 10.5GFLOPS (ピーク) (MPU、Geometry Engine、HW Lighting総計) 実力表示性能 600万〜1200万ポリゴン/秒 (ピーク) (実際のゲームを想定した複雑さのモデル及び テクスチャ等での表示性能) システム メモリ (総計40MB) メインメモリ“Splash” 24MB 持続レイテンシ性能 約10ns (1T-SRAM) A-メモリ 16MB (81MHz DRAM) ディスク ドライブ CAV方式 (回転角速度一定) 平均アクセスタイム 128ms データ転送速度 16Mbps〜25Mbps メディア 松下電器産業 光ディスク テクノロジー 直径8cmディスク 容量 約1.5GB 著作権保護技術 入出力 コントローラポート x4 メモリカード スロット x2 アナログAV出力 ×1 デジタルAV出力 ×1 ハイスピード シリアルポート ×2 ハイスピード パラレルポート ×1 コントローラ Aボタン・ホームポジション 別売ワイヤレスコントローラ ゲームボーイ・アドバンス・ケーブル メモリカード メモリカード59 SD メモリカードアダプタ デジタルAV出力、D端子、コンポーネント出力 アナログAV出力、S端子、ビデオ端子 モデムアダプタ(56Kbps)、ブロードバンドアダプタ(LAN?) 使用電源 専用ACアダプタ DC12V × 3.5A 本体寸法 150mm(W)×110mm(H)×161mm(D) (突起部分を除く) 同梱周辺機器 コントローラ x1 専用ACアダプタ x1 希望小売価格 25,000円(税別) |
ゲームキューブの発売日と同時に発売されるソフトは次のとおり。
その他、ソフト会社の大御所、ナムコ、セガ、ハドソンなどが
参加表明をしており、30本近くが開発中である。
任天堂では、初めてカセットによる供給からディスクによる
供給に切り替えた。ただし、8cm DVD(1.5GB)だ。
そのため、DVD プレイヤーにはならない。
Final Fantasy X は、12cm DVD のぎりぎりを使っているので、
そのような大作もゲームキューブから出ないだろう。
しかし、ハードよりもコンテンツの時代に
なりつつある今、クリエーターをいかに呼び込むことができるかが
勝負になるのであれば、ゲームキューブのコンセプトは間違っていない。
8/20 Microsoft の著作権保護機能 Product Activation の FAQ を公開 の記事で、Product Activation のインストレーションキーが 破られることが分かりました。 プライバシーの保護のため、インストレーションキーを一般に 公開するのは避けたほうがよいでしょう。
2001年 8月 29日、日本ゲートウェイ社は、日本ほかアジア、 オセアニア地域への営業活動を終了すると発表した。 最近では、東芝、富士通、日立などの大手電気会社が 1万人規模のリストラ策を発表しており、IT産業の 構造改革が進もうとしている。
ゲートウェイは、高性能なパソコンを低価格で販売し、 コンシューマには評判がよかった。24時間体制のサポートも アピールしつづけていた。しかし、どちらかというと ハイエンド・ユーザ向けで、使いやすさとエンターテイメント性に 欠けていたと思われる。高性能で低価格にするなら、 自作コンピュータを選択する人も多くなってきたため、 これまでゲートウェイを選んできたハイエンド・ユーザは 離れてしまったのだろう。
しかし、ゲートウェイが撤退した理由はそれだけではない。 世の中、特にアメリカでは、パソコン全体の売上と IT関連の投資が 縮小している。その影響により、日本の半導体企業である大手電気 会社も赤字決算を次々と発表、予想収益の下方修正と、 1万人規模のリストラ計画を発表した。
東芝 17000 国内が主 富士通 16400 国内外 日立 14700 国内外 松下 5000 早期退職者募集 NEC 4000 国内外 三菱 (未定) ソニー(未定) (単位は人) |
赤字の主な原因は、半導体電子デバイスの急激な需要減に よるもの。そのため、半導体工場の閉鎖もよく聞かれる。
パソコンの性能は 2GHz に到達したがそれを求める声は少ない。 携帯電話によりどこでも通話やメールだけでなく画像や音楽が 扱えるようになった。 BSデジタルを持っている人は非常に少ない。 ADSL や無線 LAN により、ブロードバンドが普及して来ると、 どこでも動画も扱えるようになる。 必要とされる性能面が十分に普及してきているため、 製品の買い替えサイクルも長くなるものと思われる。
企業活動は、情報技術を活用してスピードを上げるよう 改善をしてきた。情報技術が普及し始めたときは、対応 しない企業は競争上不利であるので導入せざるを得ないのだが、 IT関連投資が縮小しているということは、効果的にスピードを 上げるケースが少なくなっていると考えられる。つまり、 情報技術によりスピードを容易に上げることができる ルーチンワークの情報化がほぼ完了したのではないだろうか。
しかし、現状は、古いネットワーク・システムを使っていたり、 機器間の連携が完全でないために、すべての作業が自分の パソコンからできているわけではない。セキュリティの問題もある。 これらの原因は、すべて、きめ細かい対応を行うソフトウェアの 対応不足によるものである。
ソフトウェアの技術が未熟なのだろうか? 技術の問題ではないと私は考える。
ソフトウェアは、非常に柔軟である代わりに、部品同士をつなげる ことは非常に難しい。.NET や XML は、システム同士をつなぐ ための技術として注目されているが、それに準じているだけでは、 ソフトウェア同士をつなげることは十分ではない。オープンソース と対する、クローズドなソース(公開していない仕様)があった場合、 つなげることは、ほぼ不可能になる。これは、世界につながる 電話があっても、相手の電話番号がわからなければつながらない ことと同じことである。相手から電話番号を聞けばすぐに済むが、 知らなければ済んでいる住所から電話番号を推測したり、 しらみつぶしに番号を探さなければならない。一瞬で済むことが、 何日も何ヶ月もかかってしまうのである。
NTT は、心臓となる交換機やユーザの端末(県内通話)を独占し、 他社が入れなかったために、日本のインターネットの普及が遅れた。 NTT 法の改正によりようやく動き始めた。 これから分かるように、クローズドなものとつながるには政治的な 力も非常に重要になる。そして、それを変えるには非常に時間がかかる。 オープンであるのは、GNU のように単に技術(ソース)を 公開すればいいというものではない。ドキュメントを用意したり サポート体制を整えたりと、非常にコストがかかるのだ。
コストがかかるというのは、仕事が増えて失業率も減るのだろうが、 その仕事は、勝ち組の企業に要求される。なぜなら、使われている 技術とのアクセス方法を、オープンにしなければ意味がないからである。 技術自体をオープンにしてしまうのは、自社の利益を失うため、 進んで行うことはしないだろうが、アクセス方法をオープンにして ライセンス商売をすれば、市場の規模拡大とともに自社の利益も 増えるだろう。無料で誰にでも参照できるようにオープンにすれば、 パートナーを得るチャンスが増えるのは言うまでもない。 すでに、オムロンでは、(ハードウェアであるが)技術パートナー 募集のホームページにおいて自社の技術を公開しており好評だという。 クローズドであること、イコール、自社の利益を守っているという 考えは、間違いである可能性も十分にあるのである。