2001年 8月 21日、松下電器産業、松下通信工業、NEC の3社は 第3世代携帯電話端末分野において、開発協業を行なうと発表した。
携帯電話の国内シェア1位(松下)と2位(NEC)の企業が協業する 理由は、それぞれの得意分野で開発を行うことにより開発力を上げて、 世界市場に挑むというねらいによるものである。 まずは、世界シェア 第1位のノキア(フィンランド)の勢力が強い欧州をねらうという。
協業を行うのは、主にソフトウェアの分野である。 製品自体の生産は、 各社がそれぞれ行う。 つまり、P シリーズや N シリーズが統一される わけではない。 また、製品の試験も共同で行う。 これは、現在の ハードウェアが非常に高度であるため、ソフトウェアが乗った上で 試験を行わなければ、潜んでいるバグを発見するのが非常に難しく なったという背景からも伺える。その他、新端末の開発や、必要に 応じた製品の相互補完も行う。
第3世代の携帯電話は、映像(画像、写真、テレビ電話...)や音楽 (曲、音、音声...)や各種処理(個人情報、決済、PC連携...)など、 パソコン並の非常に高度なアプリケーションが要求されるという。 ソフトウェアの技術力不足というのは、最近発売された NTTドコモの 503iシリーズの各機で、バグが多く出てしまったことにも現れている。 携帯電話のエンジニアは、松下と NEC をあわせると 8000 人、 ノキアは 12000人もおり、その6〜7割はソフトウェア・エンジニア であるという。開発人数から考えても、携帯電話の開発は非常に 大変であることが分かるのだが、ノキア社1社だけで 12000人も いるのだから、世界市場に対抗するには松下と NEC の協業は 必要であるといえよう。
ソフトウェア・エンジニアにとって、協業とは自分の担当が変わる
可能性が高くなることである。自分の担当が他社に任せることに
なった場合、自分が他社に転職か出向するのでなければ、自分の
得意分野(学んできた技術や使ってきたツール)の職を失うこと
になる。人員削減はIT 関連メーカーでも活発になってきているため、
IT業界にいれば安心という時代ではなくなっている。しかし、今回の
協業は、単なるコストダウンではないため、新技術に対する開発者
の需要は大いにある。
異動があってもついていけるように、基本的な技術である、デジタル
回路のしくみやリアルタイム性を考慮したオブジェクト指向などの
設計技術、そして新技術を学ぶためのヒアリング&ドキュメンテー
ション技術を身に付けておかなければ、たとえ需要があっても、
使えない SEになってしまうであろう。
2001年 8月 6日、Microsoft は、Office XP や Windows XP に 搭載される著作権保護機能「Product Activation」に関する情報、 10の神話と FAQ を公開した。
Product Activation は、マシン1つ1つに対してライセンスを 与えているか確認してから、アプリケーションを起動する技術。 しかし、マシンを特定する方法に関して物議をかもしている。
マシンを特定するには、10種類のハードウェアを基にして作られた ハードウェアIDによって行う。その情報と、CD-ROM のシリアル 番号がアクティベーション・センターに送られ、著作権違反が ないか判定される。ただし、このハードウェアIDを生成する手法に よれば、数多くのハードウェア構成で同じIDが得られる可能性が 非常に高いと言われているが、LAN ネットワークが使えるのなら まず同じになることはない。なぜなら、ネットワーク・カードの MAC アドレスが使われているからだ。他にも、IDE のベンダーID とモデルIDなども使われている。
自作パソコンやアップグレードしたときはどうするのだろうか。 まず、ハードウェアIDは、マシンを構成する10種類のうち、4種類 が異なってもチェックには引っかからないようになっている。また、 ハードウェアの再登録を行うこともできる。
Product Activation は、おそらく、問題なく動くのだろうが、 判定方法が確率論的になっていたり、秘密にしていたりしてい るため、不審に思うだろう。それに答えようとしたのが、今回発表 された10の神話 (http://www.microsoft.com/piracy/basics/xp_activation.asp) だ。また、Product Activation をどのように運用するかについての FAQ (http://www.microsoft.com/piracy/basics/activation/mpavlfaq.asp) も公開された。
ソフトウェアの著作権を守ることは、ソフトウェアの発展のためには 必要なことだろう。しかし、そのための仕組みが仕事の邪魔をして もらうと困るのは誰でも考えることだ。私は、ネットワークで著作権 をチェックするアプリケーションを使ったことがあるが、別の事務所 に変わったときに使えなくなって非常に困ったことがある。その ケースに対する解は Product Activation にはあるが、その解を 行うにはインストールディスクを作成するような手間が発生する。 その作り方も調べなければならない。しかし、Word や Excel の ドキュメントが事実上の標準である限り(独占状態である限り)、 逃れることはできないのだろう。
以下に、10の神話とFAQの、簡単な日本語訳を載せるが、筆者は英語が 得意ではないので参考程度にして欲しい。
法人にプログラムが展開されないのでは? 登録を要求しないライセンスもあります。 プライバシーを侵害しないか? 匿名です。Microsoft に送られるのは、ハードの構成を表す Hardware Hash IDと、CD-ROM の Volume ID だけです。 Hardware Hash ID から、ハードウェアの構成がもれないか? Hardware Hash ID からハードの構成を求めることは、 数学的に不可能です。 ネットワークが必須か? 電話(カスタマーセンター)で取得することもできます。 著作権の一番の問題は、偽造販売者では? 著作権侵害は様々な方法がありますが、別の人と共有する方法が 今回の主な対象です。 登録が完了するのは難しいのでは? ブラウザでマウスをクリックするぐらい簡単です。 Product Activation は、マシンのアップグレードをしにくくしませんか? 少し構成が変わっても使い続けることができます。新しい構成で 再登録することもできます。 Microsoft のライセンス方法を変えてしまうのでは? 前から、マシン1台につき1ライセンスです。 Product Activation は解析されて破られるのでは? まだ、破られていません。しかし、いたちごっこではあります。 (追加情報:01.09.09) 月刊アスキー 9月号に、PA の解読の説明がされていますので、 すでに破られています。インストレーションキーを 公開することはプライバシーの公開につながりますので 注意してください。 Internet Explorer も Windows2000 も Product Activation が 要求されるのでは? ありません。動作しなくなると報告されたレジストリ・キーは、 別の製品によるものです。 |
ビジネスシーンで、何十何百ものマシンに効率よく適用できるのか? いくつかのライセンス方法がありますが、Product Activation での ライセンスを選んだときに Volume License Product Key(VLK) が使われます。ネットワークで VLK を渡すようにすることもできます。 Volume License Product Key とは何か? VLK は、Open License order confirmation によるライセンスを 受けたマシンに提供されます。VLK は、インストール時に使用されます。 VLK を含んだセレクト、エンタープライズ、キャンパス、スクール のライセンスを取得するには、どうしたらよいか? 各国の Microsoft Activation Center に電話してください。 詳しくは、Windows XP の発売が近づいたときにお知らせします。 製品から提供される合意番号をお知らせください。 VLK は、どのようにして取得するのか? アメリカでは、(888) 652-2342 へ電話してください。 (日本では、048-226-5731, 0120-801-734) Open Licence のときはどうでしょうか?1枚のCD-ROM から 複数のマシンにインストールできるのでしょうか? 使用を開始しようとする製品ごとに VLK は提供されます。 (おそらく1枚のCD-ROM でも各マシンに複数の VLK が提供される) Web サイトで発行できます。 Open Subscription License のときはどうでしょうか? Select Licence のときと同じです。 どの製品にどの VLK が必要か? 次の表をご覧ください。 (Office XP Suite VLK, Office XP App. VLK, Office 2000 VLK, Windows XP VLK がある。 詳細はオリジナル・ページを参照) ユーザは、VLK を手入力しないといけないのか? 通常、ネットワーク経由で渡されます。ネットワーク管理者が、 あらかじめ VLK の手続きを済ませておくこともできます。 簡単にセットアップしたいのですが、ビジネスに影響しませんか? VLK を済ませたカスタム CD-ROM を作ることもできます。 小売されているパッケージで使用することができますか? できません。volume licence によりインストールしてください。 Select Licence のときに複数の PC にインストールできるのか? できます。Select Licence 用の CD-ROM では、VLK は要求されません。 ネットワーク経由でアプリケーションをインストールしていますが、 何か影響がありますか? ネットワークを構築したときに VLK を入力する必要があります。 セットアップしたらエンドユーザは入力する必要ありません。 VLK を持った Open Licence カスタマーはどうすればいいでしょうか? 既存の Open Licence を持った方は、各国の Microsoft Activation Center に電話してください。 新規の方は、eOpen の Web サイトで取得できます。 MSDN 製品では VLK を要求されるでしょうか? はい。開発と試験のために 10までの PC にインストールできるよう にしています。 Microsoft Certified Partner program では? VLK は要求されません。Select Licence と同じです。 Office の種類によって別の VLK がありますか? 同じ VLK が使用できます。 VLK を含んだ CD-ROM は、各マシンごとに必要ですか? 1つの CD-ROM にいくつも VLK を入れることができます。 システム管理者が合意番号をもっていなかったらどうしたらいいですか? 社内調達部門か、再販業者に連絡してください。 volume licence カスタマー向けの、VLK の情報がもっとないか? http://www.microsoft.com/business/licensing/volume/product_keys.asp. |
2001年 8月8日、NTTドコモは、日本コカコーラ(株)と伊藤忠商事と 共同して、自販機と i-mode を連携したサービス Cmode の実証実験を 9月3日から開始すると発表した。
Cmode は i-mode を搭載した携帯電話を使って、情報端末機能を 備えた自動販売機(シーモと呼ぶ)にログインすることで、 現金の支払いや貯め込んだり、地図の表示やクーポン券の印刷を行う。 ログイン(個人認証)するときは、i-mode 携帯の画面に表示される バーコードをシーモの専用窓にかざすことで行う。
i-mode は、インターネット端末でありながら安全な料金徴収システム を持っている。Cmode は、i-mode の料金徴収システムを、自動販売機 にも持たせることを意味していると思われるのだが、現金は自動販売機 で払えば済むことなので、そうではないようだ。おそらく、i-mode との 連携は、個人情報を自動販売機に通知するためだけであろう。ブラウザ の機能で言えば、クッキーのようなものだ。
携帯電話で問題になるものの1つにのは、高い電話料金の徴収である。 クレジットカード的にいくらでも使えるというのは、自己破産や借金 地獄への入り口を広げてしまうという意味で、デメリットであると 考えられる。一方、自動販売機では手元に現金がない限り支払うことが できないので、ある程度、節度あるお金の使い方ができる。
また、自動販売機が広告塔の役目を加速するであろう。すでに自動 販売機には、大きなディスプレイが付いているものもある。映画の 広告を映像と共に表示しているところもある。そういった広告や、 コカコーラのキャンペーンと連動して、Cmode を使って懸賞に応募 できるようになるだろう。逆に、Cmode で応募するキャンペーンに よって、飲料の売上に貢献することにもなる。
しかし、シーモが深い情報にアクセスするための情報端末に なることはないだろう。一人が自動販売機の前に長い時間いるのは、 飲料の売上に響くからだ。自動販売機に並んで、前の人が迷っている というのは、食べ物の恨みは怖いだけに非常にイライラする。 そのため、シーモは今までのどれにも異なる情報媒体、いや広告媒体 となり、独自の文化が生まれるのではないだろうか。
2001年 4月から、@IT のホームページにおいて、「DoJa による iアプリの開発入門」という記事が連載されている。 8月3日の 記事では、「互換性のある iアプリ作成法」が掲載された。
iアプリは、ご存知のとおり、NTTドコモの携帯電話で動作する Java アプリケーションである。 Java といえば、高い互換性と いう特徴が挙げられるのだが、機種によって表示画面が異なる などの物理的な制限のために、機種依存のアプリケーションも 作ることが可能だ。 その制限を解決する方法が この記事で 説明されている。
機種依存にならないために注意するところは、以下のとおり。
機種依存にならないためには、これらの仕様の最大公約数 (各属性の最小値)で実行できるアプリケーションにしなければ ならない。 また、操作ボタン形状は、どれが最小値か判断が 難しいが、記事ではどの機種でも共通にある数字ボタンを使う ことで対応している。 (これは、ジョグダイヤルで上下の 押しっぱなしができない制限によるものであり、その必要が なければ、操作ボタンをそのまま使ってよい。)
このように、機種依存にならないためには、最大公約数の仕様で 動くようにすることだが、最大公約数をメーカー側が定義して いるのが、J-Phone と KDDI の Java だ。記事によると、どの 機種でも Java 実行環境を統一しているという。おそらく、 どの機種も同じ解像度であるのだろう。これは開発者にとっては 楽なことだし、使用者にとっては自分の持っている機種で確実に 動く(可能性が高い)というメリットがあって、とてもよいこと に思える。いわゆる標準化によるメリットだ。
しかし、技術革新の激しい世界では、標準が邪魔になってしまう ことがある。 最新技術が標準のために使用できないことになり、 ユーザも最新技術を使えないという問題が起きてしまう。
機種依存の問題は、最大公約数(各属性の最小値)で解決できる のである。 つまり、各属性の最大値まで制限してはならない (最小値に影響しない限り)。
標準と技術革新の問題をうまく解決している方法は、Palm に ある。Palm はオープン・プラットフォームであり、メーカーが 自由にソースを改良して機能拡張できる。そのため、解像度の 高い Palm や独特のインターフェース・スロットを持っている ものが登場している。しかも、拡張した機能は、Palm OS に フィードバックする必要があるため、標準である OS も発展して いく。Palm 各社が、Palm プラットフォーム(Palm の市場) を育てており、とても優れた開発手法であろう。
一方、WindowsCE は、MIPS、SH3、SH4、ARM など多くの プラットフォームに対応している。Palm は、Dragonball しか 対応していないことを考えると、とても汎用的であるように 思える。最近では、WindowsCE のカーネルをオープンにしており、 メーカー側も開発しやすくなってきている。しかし、独自に 機能拡張してはならないという制限があり、Microsoft らしい 独占的な考え方だ。しかし、Pocket PC も各社から発売され、 売れ始めており、今のところ成功している。
携帯電話のアプリケーション・プラットフォームは、最近 始まったばかりだ。標準を厳しくするのは、得策ではないだろう。 しかし、標準を明確にしておくことは非常に重要だ。つまり、 最大機能の制限をしないような、最小機能を集めた標準を、 オープンに明確していくことだ。