サン・マイクロシステムズのソフトウェアパッケージ「StarOffice」は,マイクロソフト
Officeを敵に回し,間もなくリリースするバージョン6でさらにメインストリームに近づく。3月28日,サンのCOO(最高業務責任者)エド・ザンダー氏が意気込みを見せた。
サンがStarOfficeを取得したのは1999年だが,これまでコンピューティング世界の「周辺地域」以上の領域に進出できずにいる。ザンダー氏によれば,サンは次のバージョン6で,大手企業や米国外の顧客を確保し,この状況を変えるつもりだ。
製品を顧客に届けるというのは,実は難しい課題だ。ザンダー氏は,ゲートウェイ幹部がマイクロソフトの反トラスト法(米独禁法)訴訟の審理で,マイクロソフトのライセンス合意のために,Windows
XPを受け入れざるを得なかったと証言したことに触れ,デスクトップソフトウェアを広めるには,「AOL,もしくはコンパック,ヒューレット・パッカード(HP),IBM,デルコンピュータのどれかを確保しなければならない」と話す。
ザンダー氏はサンフランシスコで開催の「JavaOne」に集まった報道陣を前に,5月のStarOffice
6のリリースと同時に大口顧客も発表すると述べている。
同氏によれば「よく聞く」米大手企業で,既にStarOfficeの試験導入が始まっている。「まだ全面的な導入ではないが,1つの課や事業部門でStarOfficeを導入している」
サンは,「新しいMicrosoft
Officeにアップグレードする度に支払う3000万〜4000万ドルという大金は必要ない」を売り文句に攻勢をかけている。コンピュータユーザーが必要なのは,基本的なソフトだけであり,「この地球上のほとんどの人に当てはまることだが,必要なのは電子メール,ワープロ,プレゼンテーションソフト,ブラウザ,それだけだ」というわけだ。
ザンダー氏は,「Windows
XPのインストールにかかるコストのために,中国,インド,ブラジル,英国など,米国以外の国ではStarOfficeの導入が本当に始まっている」と言う。サンは米国での試験導入の結果を発表する際,StarOfficeの所有コストがどの程度かも明らかにする。
同社は直接顧客にコンタクトすることで,マイクロソフトの「迂回」を試みている。同社は新たに,次のような提供契約を結んでいる。
サンは,StarOffice(アジアでは「StarSuite」と呼ぶ地域もある)を中国教育省に寄付する計画を持っており,そのコピーは,学生や教師,事務担当者などに配布できる。同社は3月27日,北京でバージョン6のマスターCD-ROMを贈呈している。
ザンダー氏は英政府商務局と契約を結んだ。この契約の下,ソフトを買う政府機関は,StarOfficeをMicrosoft
Officeと同等に目に触れるよう措置を取る。
デスクトップ用として人気が高いLinuxを手掛けるマンドレークソフトが,同社の会員サービスを受けている一部プレミア顧客を対象に,Star
Office 6をダウンロードでリリースしたと発表している
StarOfficeはLinux,Windows,Solarisに対応。サンは同スイートの基幹コードをOpenOfficeで公開しており,オープンソースプロセスを通じて拡張できるようにしている。このため,バージョン6が有料でリリースされた後も,無料版の提供は続けられる。なおバージョン6は教育機関を除いて100ドル弱の価格で提供されることになっている。教育機関向けのディスカウント価格はまだ発表されていない。
だがサンにとって,マイクロソフトの座を奪う計画に着手するだけでも容易とは言えない。調査会社ガートナーは,サンの計画がうまくいけばとした上で,StarOfficeは市場シェアを10%ほど確保できると分析する。
一方Linux方面では,サンはKDE
Office,AnyWareなどのプログラムと競合することになる。またコードウェーバーズが3月27日,Microsoft
OfficeをLinux上で走らせるためのソフトウェア「CrossOver Office」を発表している。
UNIXクローンのLinuxは,Solarisと近く,いわば「いとこ」のような関係にあるものの,サンのローエンドサーバの売り上げを侵食しつつある。だが同社は今年2月,Linuxの導入を表明。Linux搭載サーバを販売するとの方向転換を明らかにした。
Linuxソフト/サービスの最大手,レッドハットは,公然とUNIX顧客を狙い撃ちしている。だがザンダー氏は,サンはLinuxを「Windowsのライバル」であり「UNIXのライバル」とは見なさないと語る。
「Linuxの本当の強みは,Windows
NTに対抗できるということだ。サンはNTシステムを追撃できる唯一の企業だ」とザンダー氏。同氏は,コンパックのような企業は,Windows搭載サーバの売り上げが食われることを気にして,LinuxとWindowsを対抗させるようなやり方ができないとしている。
「サンがPCメーカーにLinux対UNIXというポジションを取らせたのはミスだった。LinuxとUNIXは同じものだ」(同氏)
また同氏は,今日のように景気が停滞する中でサーバを販売するビジネスを手掛けることの危険についても口にした。サンは顧客基盤を多様化し,最近の景気の落ち込みで打撃を受けた通信企業/金融サービス企業から,ヘルスケア/製薬/製造業界や政府機関へも拡大を図る。
サンは,力を取り戻しつつあるIBMだけでなく,グレーマーケットで売られるサン製品の中古品とも争わなければならない。こうした中古品は,倒産したインターネット企業が競売にかける場合が多い。
ザンダー氏によると,「グレーマーケットは数百万ドルもの価値がある」装置を買い集めており,これがサンの売り上げ面でしこりになっているという。同社の最近の四半期の売り上げは31億ドルだった。
同氏は,グレーマーケットは以前ほど大問題ではないが,それでも懸念事項であることには変わりはないという。
「1月のスーパーボウルで会った顧客は,最上位モデルのE15Kを正規価格の3割程度で買ったと嬉しそうに話していた」(同氏)
また同氏は,倒産したウェブバンのサーバのオークションに関するテレビ報道を目にし,苦い思いをしたことにも触れている。
だがプラスの側面としては,こうした顧客もIBMやHPではなく,サンのシステムを買い続けるということだ。サンにとってはサービスやアップグレードを売るチャンスでもある。
なお,サンは,売上減少に対処するため,コスト削減を行っている。その1つとして,メモリなどの部品を逆オークション,つまりサプライヤーが入札し,その中の一番安いものを仕入れるという方法を取っている。
ザンダー氏によれば,サンはこの方法で2001年の10億ドル相当の注文で,1億ドル削ることができた。今後は印刷用紙などのオフィス用品でも逆オークションを使う方針という。
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