weekly news column back number


週刊 IT ニュース&コラム 2004/12/13
IBMのパソコン事業のすべてを中国Renovoに売却

2004年 12月 7日、IBM はパソコン事業のすべてを中国の最大手レノボに 売却することを発表した。 なお、IBM ブランドは5年間継続して使われる。

IBMといえば、ご存知のとおり世界を代表するコンピュータ会社で、 パソコンのシェアは世界第3位。 現在のパソコンは、IBM PC という規格 をベースにしているのだ。 しかし、10年前に IBM はガードナー氏 の手腕によってメインフレーム事業を縮小して危機的状況を乗り越えた 経緯があり、その際、パソコン事業の縮小も検討されたが、見送られた。 当時からパソコン事業は不採算事業であり、そして現在のパソコンの価格は 10万円を切るまでになってきている。Pentium などの CPU の周波数も 限界に来ており、買い換える要素がなくなってきている。

日本のメーカーのパソコン事業も、ほとんどが不採算事業になっている。 それでも続けているのは、プロ野球と同じく、広告塔として機能している からだ。 しかし、IBM は、名を捨てて実を取った。 いや、IBMは、 パソコン事業に広告塔を求める必要がなくなったのだろう。 IBMは今やITサービス企業に変身しており、知名度も世界規模である。 テレビコマーシャルで見ても、パソコン関係はほとんど無く、 ITサービスばかりである。 安くなってきたパソコンを宣伝したり、 リコールが発生したりすると、企業価値が下がる危険もあるわけだ。

しかし、一般消費者に与えた衝撃は相当なものだ。 IBM への直接の 影響は無いだろうが、パソコン業界の再編が起きる可能性を持っている。

[参考リンク]
http://nikkeibp.jp/wcs/leaf/CID/onair/jp/pc/348201


週刊 IT ニュース&コラム 2004/11/29
おばあちゃんにも使えるツーカーSの簡単さを分析する

2004年11月28日まで、ツーカーは、かんたん携帯「ツーカーS」の簡単さを おばあちゃんにも知ってもらうために、巣鴨でキャンペーン活動を行った。

ツーカーSは、各キャリアから発売されている簡単な携帯電話の中でも、 見た目からして非常にシンプルなものだ。 この携帯電話の簡単さを分析して みたいと思う。

まず、最近の携帯のような2つ折りタイプではなく、番号ボタンと目立つ 通話ボタンという構成であるいことが挙げられる。 番号ボタンが外に 見えているので、これが電話であり、番号を押して電話をかけてください ということを暗黙的に示している。 便利な短縮ダイヤルボタンが表に 出ていないところがポイントだ。 これは、どの電話も番号ボタンが主役で 短縮ダイヤルは脇役だからだ。 確かに、短縮ボタンですぐに電話がかけら れて便利、ということも言えるが、初めて押してかけるのは勇気がいる ことだろう。 確かに電話は使えるかも知れないが、本当に相手にかかるのか 心配だからだ。 それに、一発でかけられてしまうのは誤って押してしまう 危険性もあり、これも機械アレルギーを刺激する。 ツーカーSは、更に 短縮ダイヤル機能すら搭載していない。 これは不便だと感じるかもしれないが、 慣れの問題だろう。携帯サイトの URL を打つより遥かに簡単だ。 覚えにくい かも知れないが、アドレス帳を持ち歩けば解決することだ。これは、短縮 ダイヤルを登録する複雑さも避けることができる。

短縮ダイヤル機能をカットしたのは、ボタンの数を減らしたいためだろうが、 よく使う機能なのでつけたもよかっただろう。 これはよく使う機能でも 脇役なので小さめのボタンでもいい。 なぜなら、よく使う機能は何度も 使うため、自然と位置を覚えてしまうからだ。よく使うものほど操作を 簡単にすべしという設計法則があるが、最も簡単にする必要は無いのだ。

次に、液晶画面が無いことだ。 液晶がなくなると iモードもできないし、 電話番号を確認することもできない。 機能名も表示できないので、携帯に 多くの機能をもたせることもできない。 しかし、それ以上に、液晶画面自体が 難しいものというイメージがあるのだ。 パソコンをよく使う人でいえば、 簡単に操作するためのツールバーなのだが、そこにあるボタンが4行ずらっと 並んでいたりしたら、それだけでそのアプリ=複雑とうイメージができて、 とっつきにくくなってしまう。 おそらく慣れたら簡単なのだろうが、 初対面のイメージというのは非常に大事だ。 どうしも iモードをしたいの なら、別の機種を買えばいい。 DVD 作成はパソコンでもできるが、 家電の DVD レコーダーが売れているのは、製品がある機能で完結している から、頭の中でイメージがしやすいためだ。 パソコンで行った方が操作 しやすいのかも知れないが。

無料キャンペーンはよく行われるが、携帯電話で好きな場所にかけていい と積極的に勧めるのは珍しい。 電話したことが無い人はいないので、体験 させる意味がないと考えるかもしれない。 しかし、外で電話をかけることは 家でかけるのと雰囲気がぜんぜん違う。 どこでも電話ができることを実感、 いや発見するだろう。 家に電話があるから必要ないと考える人に、携帯電話 の必要性を与えるのだ。

ツーカーSの開発者は、シンプルと便利の違いをよくわかっていると思う。 ボタン一発だからシンプルで簡単に使えるというのは常に正しくないのだ。

[参考リンク]
http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/0411/26/news084.html


週刊 IT ニュース&コラム 2004/11/15
NECエレがシステムLSI向けにソフトウェア開発体制を強化

2004年11月8日、NECエレクトロニクスは、システムLSI の開発に 関連して、ソフトウェア開発を強化する体制を取ったと発表した。

DVDレコーダーや携帯など、最近の高機能なデジタル機器の心臓部は、 システムLSI(多くの機能を持った半導体)になってきている。 たとえば、DVD(MPEG2)のエンコーダ、デコーダは、元々ソフト ウェアで作られたもので、それをハードウェアにするのだから 並大抵のことではないだろう。 だからと言って、売れる時期を 逃すわけには行かないので、少しの修正でも時間がかかってしまう ハードウェアより、ソフトウェアが必要になる場面も多くなって くるだろう。 ハードウェア会社である NECエレクトロニクスが、 ソフトウェアを重視するようになったのは、そんな場面が多く なってきたことの反映だろう。

NECと松下は、携帯電話のソフトウェアの開発を協力することで 開発力を上げている。ただ、今回のものは、最終製品のメーカー ではなく、部品メーカーがソフトウェアを強化しているところが ポイントだ。

これは、Java や C# で使われている仮想マシンの考えると 分かりやすい。 仮想マシンはソフトウェアのプロセッサだ。 しかし、プロセッサであれば、これまでどおりハードウェア化 できるだろうと多くのチップメーカーが考えて、Java チップと 呼ばれるものができた。ただ、現在でも、細かい部分で完全な ハードウェアにはなっていないと思われる。 元々ソフトウェア 開発者が設計した仮想マシンなので、ハードウェアにしにくい 部分はあるだろう。 その部分はソフトウェアが補っている。 つまり、ハードウェアとソフトウェアの両方があって、初めて チップとして完全な部品になっているのだ。DVD のエンコーダ、 デコーダのチップでも、おそらくソフトウェアの助けが無ければ、 完全な部品にならないのだろう。

デジタル家電が非常に多く出荷されている現在では、開発期間 の短縮のために、ほぼ最終製品に近い高機能で使いやすい部品が 求められている。 ソニーや松下など、最終製品を出荷する メーカーは他社と共同開発で開発効率を上げているが、おそらく 両社の製品に共通した部分を共同開発しているのだろう。 それは つまり部品であるので、ソフトウェア技術者の需要は、アプリケー ションより部品の比重が高まっているということだ。 部品と いうとあまり明るいイメージは無いが、最終製品に近くなっている だろうから思ったより面白いのかもしれない、と人気職業 第3位のプログラマーを選んだ高校生が気づけば、将来の日本の 競争力は強くなるかもしれない。

[参考リンク]
http://ne.nikkeibp.co.jp/members/NEWS/20041108/106348/


週刊 IT ニュース&コラム 2004/11/1
NINTENDO DS とソニー PSP の新携帯ゲーム対決、本当のライバルは

2004年12月2日、任天堂は、携帯ゲーム機 NINTENDO DS を発売する。 2004年12月12日、ソニーは、携帯ゲーム機 PSP(Play Station Portable) を発売する。 テレビゲームではソニーが優勢だが、携帯ゲーム機では任天堂の独占状態。 ソニーがその牙城に本格的に崩しにかかる形だ。

NINTENDO DS 特徴は、2画面であることとペンでも操作できるということだ。 2画面であることは、2つの画面で異なる状況が同時に起こり、両方の状況を 把握しながら進めていくことになる。 これではより忙しく難しくなると思われる かも知れないが、作り方次第だ。 以前から任天堂はソニーと比べて対象年齢を 低く、ゲームを楽しむことに重点を置いていることから考えると、別の画面を 見ていないからゲームオーバーになるケースをなるべく排除するだろう。 むしろ、2画面であることでより状況を把握しやすくしたり、キャラクターが 上下の画面をダイナミックに移動して楽しませることになるだろう。 高いビルに上って見慣れた町が変わって見える、そういった面白さを見せて くれると期待している。

ペンで操作することは、これもテレビゲームでは味わえない特徴だ。これまで ボタン操作による間接的な操作であったが、ペンで操作することで、ダイレクトに キャラクターと触れ合う感覚を得ることができるようになる。 ペンでタップ するのは、これまでのボタン操作とあまり変わらないが、やさしくなでたり、 勢いよくドラッグして放り投げたりすることができるようになる。 もちろん 指でも操作できる。これは、間接操作になるマウスでも味わえない感覚だろう。 PS2 のアイトイという体を使って遊ぶゲームがあるが、これも間接的だ。 直接的な操作は、ゲームが苦手な人でもとっつきやすいだろう。 それに2画面であることを生かして、上の画面でゲームの状況を、下の画面で 指で操作することができる。 トラックボールを転がすようなことがタッチ スクリーンでできるのだ。 応用性は高い。

PSP(Play Station Portable) の特徴は、ガンガンに3Dゲームが動くということだ。 性能的には PS1 より PS2 に近い。つまり、これまで家やゲームセンターでしか 楽しめなかったゲームが、そのまま携帯することができるというわけだ。 3Dゲームを十分に楽しむには、見やすく綺麗な画面である必要がある。見にくい から敵を見逃してゲームオーバーになってしまってはならない。もちろん PSPはそれを踏まえている。 携帯電話の画面の綺麗さに驚いたような感動が 得られることは間違いないだろう。

そして、ソニーは音楽を携帯するという概念を生み出したところなので、 もちろん、音楽を PSP に入れて楽しむこともできる。ATRAC3plus だけでなく、 MP3の再生ができる。 これは、CCCD の専用アプリをパソコンで使う必要性から 開放されるということだ。 USB2.0 で PSP をパソコンに直接つないで、 PSPがディスクとして見えることも操作性を上げている。ファイル・ブラウザ として、WEGAやPSXで採用されている XMB が搭載されているのも注目だ。 ソフトは、UMD という新しいディスクで供給されるが、DVD のような 映像コンテンツも供給されるという。 ただ、これは新しい市場であり、 詳細も発表されていないので未知数だ。 UMD はソニー独自の規格。 PS2 が DVD を普及させたという方程式が成り立つだろうか。

携帯ゲームは任天堂の独占状態だが、PSP の最大のライバルは、実は携帯電話 や音楽プレイヤーなのかも知れない。 おそらくPSPは高校生以上をターゲットと しているだろうが、そのころには携帯電話を持ち歩くようになるし、音楽プレイヤー も持ち歩いているだろう。 置き換わるとしたらおそらく音楽プレイヤーだろう。 音楽がメモリースティックしか使えないのでは、携帯電話のオマケと同じだ。 しかし、MD に対応して MP3も聞けるようになっていれば主役となり、iPod の ユーザが飛びついたことだろう。 ソニーは、純粋なゲーム機、最高の携帯 ゲーム機として勝負するつもりらしい。 もし、今後 UMD が自由に作れるように なってから売れ出したら、独自規格とうい安易な著作権保護技術によりまた 利益を失ったことになる。

[リンク]。
http://www.nintendo.co.jp/ds/
http://www.jp.playstation.com/psp/


週刊 IT ニュース&コラム 2004/10/11
東京三菱銀行が ATM に手のひら静脈認証技術を採用

2004年10月12日から、東京三菱銀行は、ATMの利用者の本人確認に手のひら静脈 認証技術を採用した。 利用できるのは、「スーパーICカード『東京三菱-VISA』」 の利用者で、手のひら静脈認証技術に対応した ATM で利用できる。 対応した ATM は、全国有人店舗約260店に1台ずつ設置する。年内にも無人店舗 約300店にも設置する。

銀行のキャッシュカードといえば、長い間、磁気カードと暗証番号であったが、 ついにバイオメトリクス(本人の体の一部を本人確認の材料とする認証技術)を 使う時代に突入しようとしている。

最近は、コンビニの ATM から他の銀行から引き落としたりできるようになって 便利になった。 しかし、その ATM が犯罪者が設置したものだったらどうだろう。 磁気カードを通し、暗証番号を入力し、しばらくして現在故障が発生している ために使えませんとなったら、気をつけたほうがいい。 これは情報が盗まれた ことになるからだ。 そこで、手のひら静脈認証技術というバイオメトリクスを 使って、セキュリティを強化しようというのが、今回のねらいだ。

バイオメトリクスとして最も古くからあって有名なのが、指紋認証だ。 最近では 携帯電話や USBフラッシュメモリにも搭載されている。 今回の手のひら静脈認証 技術は、ある装置に手のひらをかざすと、その手のひらに通っている静脈の形状を スキャンして、あらかじめ登録しておいた本人の形状とあっているかどうかを 判定する方法だ。 採用理由はわからないが、おそらくもっともミスが少ないの だろう。指紋認証の場合、指を傾けすぎると認証に失敗することがあるからだ。 長い間、バイオメトリクスは提唱されてきながら採用実績が少ないのは、他人を 排除することができても、本人まで排除されてしまう可能性が少ないことが、 なかなか実証されなかったからだと思う。 あと、銀行の体質が変わったことも 大きな要因だろう。 機会に拒否反応を示す古い人なら、いくら実績を主張しても 門前払いになるものだ。 また、消費者がインターネット・バンキングを利用する ようになり、Suica の非接触 IC カードを受け入れたという実績も、採用の きっかけとなっただろう。

銀行側は、単なるバイオメトリクスのICカードを導入しただけではない。規制緩和 により、今回の「スーパーICカード『東京三菱-VISA』」には、クレジットカード 機能や、消費者金融を行える機能、電子マネー Edy の機能といった、多機能IC カードであることで、消費者からもうけようという考えがあるようだ。まぁ消費者 にとっては、必要な人であれば使うし、必要でない人であれば使わないことに 変わりはない。 パスワードを覚えておく必要もなくなるし、安全性が高まると いったメリットが得られるのである。 これが消費者に受け入れられるかどうかは わからないが、多くの銀行が採用していくことになるだろう。

[リンク]。
http://japan.cnet.com/news/sec/story/0,2000050480,20074799,00.htm


週刊 IT ニュース&コラム 2004/9/27
エイベックス、CCCD を弾力的にする方針に転換

2004年9月17日、エイベックスは、パソコンにコピーできない、コピーコント ロールCD(CCCD)の導入をアーティストの判断に委ねていく方針に変えると 決定した。

Winny などのファイル共有ソフトが普及し、有料で売られている楽曲が、 ネットから無料でダウンロードできてしまう事態になった。 それに対抗 するために、パソコンへ楽曲をコピーできないコピーコントロールCD (CCCD)を 2002年から導入してきた。すでにパソコンで音楽を楽しんだり、 MP3プレイヤーに落として楽しむ人がいたため、消費者からは非常に評判が 悪かったし、エイベックスもそれを予想していたが、強行的にCCCDの導入を 続けてきた。

それから2年半たち、状況は変わってきた。 まず、Winny の開発者が 著作権違反幇助の疑いで逮捕されたこと。 まだ判決は出ていないが、 開発者は Winny が著作権を破壊することが目的ではないことを認めている。 そして、浜崎あゆみを育てた松浦氏がエイベックスを辞めるかどうかという 内紛起き、これに対し消費者は、アーティストを守ろうという動きに火が ついた。 消費者もバカではないので、売り上げが低迷していることが内紛の 原因の1つであり、きちんと商品を購入することが大切であると理解した。

そして、iPod の普及がある。2002年当時は、音楽はネットワークで購入 するスタイルに変わっていくだろうという予想があったが、現在でもあまり 普及していない。おそらく、PCを買い換えたときに引継ぐことが非常に 難しく、一度購入しても永久に聞けないのではないかという不安感があった ためだろう。その代わり、デジタル音楽は、iPod などの ハードディスク を搭載した MP3 音楽プレイヤーに移して、持っているCDをすべて持ち 歩いて楽しめるという方向に進化した。iPod は、CCCD の CD を入れる ことができないので、iPod では聞けないのなら CCCDも買わないという、 著作権を尊重して CD を買っていたユーザにも見放されるようになった。

CCCDは、購入しないと音楽を聴けないように技術的に対策をしたものだ。 家電を使いこなすことができない一般ユーザにとっては、技術的対策と いうのは非常に閉鎖的に映る。 たとえ著作権的に認められている制限的な コピーによって、MP3プレイヤーで聞くことができる方法があったとしてもだ。

それは何故だろうか。 著作権保護機能が標準化されて、どのメーカーの 商品でも著作権的に認められているコピーができるようになり、永久に 聴くことが保障されていることが実証されていないからだ。

それに、一般の消費者は、商品を購入することには抵抗を感じないが、 古い曲を集めて売っている業者には疑問を感じているだろう。 アーティストの顔が見えなかったり、著作権を入手した、どこかわからない 業者が売っていて、すでに他界されているアーティストには直接収入が 入らないからだ。だから、著作権の期限が死後50年と決められているのだが、 多くの著作権保護機能にはそれが考慮されていない。 それに、引用のために 使うこともできない。おそらく技術的に非常に不可能なのだろう。

著作権保護が強化されることで、さまざまな商品が安く登場するように なってきた。しかし、それは生産者の論理だ。 消費者は、リスペクト しているアーティストにはがんばってもらいたいという気持ちを持っている。 その気持ちを確実に集めるしくみを作るのではなく、その気持ちをいかに 作り出し、その気持ちに適える1つの方法である商品(モノ)を買うという 行為をいかに自然にできるか、無料で入手することがアーティストにとって 損失であることと知るきっかけがあるかどうかが、ソフトウェア産業の発展の 鍵になるだろう。 結果的には、CCCD騒動は、その啓蒙の機会となったようだ。

[リンク]。
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20040917/avex.htm


週刊 IT ニュース&コラム 2004/9/13
livedoorが「ねとらじ」の営業権取得。プロとアマの垣根を超えられるか

2004年7月、livedoor は、個人放送のインターネットラジオ「ねとらじ」の 営業権を譲り受けた。

「ねとらじ」は、個人レベルのラジオ放送のストリーミング配信を無料で 行えるサイト。 ソフトのインストールなど、ある程度の準備は必要だが、 たとえば、日本代表の試合を観戦している居酒屋からリアルタイムに 放送することも手軽にできるものだ。 おそらく、球界参入をねらう livedoor だけに、もし参入できたら、そういった放送が流れることだろう。

配信者や鑑賞者の関係は、Blogや実況掲示板とほとんど同じだろう。 情報発信したい個人が任意の人に無料で配信するという形だ。 実況掲示板のように誰でも参加ができるわけではないが、おそらく リードオンリーの人が多いだろうし、テレビを見ながらであれば、 インターネットラジオの方が適している。

今のところ「ねとらじ」はボランティアレベルであるが、livedoor が参入 したのであれば、将来的には日本代表の試合ような大型イベントでの 放送のように大域幅が必要となる場合に課金をするのだろうが、 それは市民権を得てからだろう。

従来のFM/AMラジオ放送をインターネットで流すことは、著作権や スポンサーとの関係で実現できていない。 ラジオ番組の定番である 音楽は、著作権の問題を解決することが非常に面倒だからだ。 政府は、コンテンツビジネスの発展を願って、著作権を強化する 動きを見せている。 しかし、使われなければ意味が無い。 商売は、 料金を確実に著作権者に渡すだけでは成立しない。 消費者が 無料で事前情報を得て(広報活動を通じて)初めて利用者との 合意を得た取引ができるのだ。

つまり、GPL ライセンスや利用者登録によるライセンス提供など、 ライセンスのテンプレート作成が、コンテンツビジネスの発展の カギとなってくるだろう。 たとえば、プロモーション活動中の曲は、 曲の一部を抜粋し、購入方法などを含めた広報用コンテンツを 提供する、といったものだ。 もちろん、無断で一部を流用する ことは禁止されていることが多いので、放送権を取り消すような システムが必要になるだろう。 このようなシステムが livedoor に確立されれば、livedoor は、音楽の提供者から広告収入を 得ることができるだろう。

そして、このビジネスモデルが成功すれば、スポーツの試合の 実況放送に、放映権料を徴収することができ、スポーツの発展に 貢献することだろう。 プロ野球の合併騒動で明らかになったように、 アマチュアからプロへのスムーズなレベルアップが文化を育てる カギなのだ。

[リンク]。
http://pcweb.mycom.co.jp/articles/2004/09/08/ladio/


週刊 IT ニュース&コラム 2004/8/30
国産・圧縮解凍ソフトの脆弱性を突いたウィルスが出現

2004年7月30日、多くの圧縮解凍ソフトの脆弱性が窓の杜より 指摘された。 そして8月18日ごろ、その脆弱性を突いたジョーク 的なウィルス(ぬるぽウィルス)が発見された。 今後、凶悪なウィルス が出現する可能性があるため、圧縮解凍ソフトのアップデートを行って欲しい。

一部のソフトは、脆弱性を知りながら、対応を行っていないのもある。 そういったソフトを使い続けるときは注意が必要だ。 なお、著者作の Archives Folderizer SV も、遅れながらこの脆弱性に対応した。 シェアウェアではあるが、無期限試用が可能なので、 フリーウェア版をお使いだった方もアップデートして欲しい。 ライセンスを要求するメッセージも設定で無くすことができる。

今回の脆弱性は、これまでどおりメールに添付された実行ファイルを 開かないように気をつけているだけでは不十分である。 ファイル共有ソフトやダウンロードサイトからダウンロード した圧縮ファイルを開いて、ちゃんと正しいデータが 見えたとしても、裏で感染する可能性があるのだ。

仕組みは簡単に言うとこうだ。 解凍するときに絶対パスや 親フォルダへの相対パスが圧縮ファイルに指定されているときに、 スタートアップフォルダに解凍される可能性があるのだ。 つまり、ユーザが怪しい実行ファイルを開かなくとも、 データファイルを見ようと解凍しただけで、Windows を 起動したときに感染するというわけだ。

これに対応し、圧縮ファイルを作成するツールは、絶対パス などを指定できないようになってきている。 もちろん、 悪意のある人が古いバージョンの圧縮ツールや、独自に 圧縮ファイルを作成して、ウィルスを作成する可能性もあるので、 解凍ツールも対応する必要がある。

少し脱線するが、ウィルス対策ソフトは、圧縮ファイルの中も チェックする。 チェックには非常に時間がかかるのは仕方ないが、 圧縮ファイルの上にカーソルを持っていくだけで10秒以上も 待たされてしまうのは勘弁して欲しい。圧縮ファイルがたくさん あるマスターフォルダの操作性が著しく悪くなっている。特に お客に提出したファイルに対応するために取り出すとき、急が なければならないのに、マウスを少し動かすたびに10秒待たされ、 ストレスがたまる一方だ。しかも、私の使っているソフトでは、 この機能をオフにできないようになっている。 普通のファイル同様、解凍した瞬間に検出すればいい話なのに。 これも、ウィルスを撲滅できない原因なのではないだろうか。

実は、今回の解凍の脆弱性は、数年前少し話題になったことがあるが、 現在ほどセキュリティに注目が集まっていなかったので、騒ぎには ならなかった。そして、マイクロソフトは、Windows XP の ZIP 解凍機能に、今回の脆弱性を話題になる数ヶ月前に自ら対応している。 国内の開発者は、意外とセキュリティへの関心が低く、世界的に見て 遅れているのかもしれない。

[リンク]。
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/special/2004/08/19/4290.html
http://www.forest.impress.co.jp/article/2004/07/30/arcsecurity.html


週刊 IT ニュース&コラム 2004/8/16
Windows XP SP2 の開発完了。しかし導入は慎重に

2004年8月6日、Windows XP SP2(サービスパック2)の開発が 完了し、製造段階へ入った。 日本語版は、8月末あたりに、 Windows Update を使って無償で入手できるようになる予定。

Windows XP SP2(以下、SP2)は、Windows XP にセキュリティを 強化した無償アップグレードバージョンだ。 インストールすれば ネットワークの外から自分のパソコンを勝手に操作できないように なり、安全性が高まるというわけだ。 これで、怪しいホームページ を見ても、情報が盗まれたり、データが破壊されたりする可能性が 低くなる。 邪魔なポップアップ広告も無くなるらしい。

というわけで、ダウンロードできるようになったら早速インストール してみようと思うことだろうが、少し待って欲しい。 ネットワーク の外から操作できなくなるということは、逆に言えば外からの 情報がタイムリーに得られないということである。 たとえば、 ネットワークゲームでは、相手の動きをリアルタイムに画面に 表示することができなくなってしまうのだ。 また、少数派かも しれないが、自宅にサーバを立てている人は、そのままでは 外からアクセスできなくなってしまうのだ。

単に、外からアクセスできないというわけではない。 ネットワーク の先のアプリケーションサーバやデータベースなどにアクセスする アプリケーションでは、こちらから外へアクセスするものであっても 使えなくなる可能性がある。 複雑な通信の途中で、コールバック的な 使われ方を内部で行っているミドルウェアが存在するからだ。 すでに、IBM から障害が報告されている。 ファイル共有ソフトも 内部でコールバック的な通信を行っているので使えなくなる。

ソフトウェアが SP2 に対応しているかどうかは、それぞれのソフト ウェアのホームページを見て、動作保障されているか確認して欲しい。 それから SP2 をインストールしても遅くはない。 特に、会社の パソコンでは、業務アプリケーションが使えなくなる可能性がある ので、会社のネットワーク管理者の指示に従って欲しい。

SP2 は、これまでのアップグレードと規模が全然違う。修正の規模が 大きければ、いくら正しいプログラムでも動かなくなる可能性は高い。 過渡期は混乱するものだが、進化するには避けて通れないのである。 心配であれば、数ヶ月待てばよい。 SP2 のアップデートが出ているかも しれないし、アプリケーションのアップデートが出ているかもしれない。

[リンク]。
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0408/10/news055.html
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0408/09/news016.html
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0408/10/news054.html?c


週刊 IT ニュース&コラム 2004/8/2
手軽さを追求した携帯AVプレイヤー、Arex PocketMX PVR

2004年7月21日、RWC社は、ポータブルAVプレイヤー「Arex PocketMX PVR」を発表した。発売日は 8月12日。2万5千円。

ウォークマンに始まった携帯AV機器の最近のトレンドは iPod に代表されるハードディスク音楽プレイヤーだ。 自分のもっているすべてのCDを持ち運ぶことができる ことで評判になっている。 そして、次にブレークするのは、 携帯するビデオ再生機器と私は見ている。

テレビを見ることができる携帯電話が Vodafone から 登場して好評を得ている。しかし、朝の通勤時間に見える テレビ番組は、ニュースばかりでしかも同じニュースを 繰り返し放送している。番組自体が、忙しい朝に家で 少し見るというライフスタイルに合わせたものになって いるのだ。しかし、ニュースより録画しておいた娯楽番組や、 語学教育番組を見たい人もいるだろう。

PDAや一部の携帯電話や専用器で、やろうと思えば録画した 番組を見ることができるのだが、実際に使うとなれば 画像形式をパソコンで変換しなければならない。しかし、 Arex PocketMX PVR は、小さな本体にエンコーダーを搭載 しているので、外部映像入力端子につなぐだけで録画する ことができる。しかも、タイマー録画ができるのだ。 ただし、チューナーは備えていないので、ビデオ側も予約 しなければならないが、パソコンに比べれば格段に扱い やすくなった。

動画再生時間は、最大2時間である。バッテリーが2時間 持ち、256MBのSDメモリカードに長時間(LP)モードで2時間 入るということだ。出張するには少し足らないが、通勤時間 を有効に使う目的であれば十分な時間だ。

動画は MPEG4 の ASF形式。 そのほか、JPEG, MP3 も再生 することができる。ただし、WMV, WMA, DivXなどには対応して いないため、付属ソフトで変換する必要がある。

パソコンなしでビデオをケーブルをつなぐだけで録画できる という手軽さは、操作性以上に重要なファクターだ。 インターネットが普及する前は、パソコンは、紙の文書を 作るための道具であったが、インターネットが普及して パソコンで文書を見る機会が増えた。コンテンツがクリック 1つで見ることができるように用意されているからだ。 内容が面白いかどうか分からないうちに、コンバートなどの 作業をする気はなかなか起きないものだ。

年末にはPSP(プレイステーション・ポータブル)が発売 されるが、UMDという超小型ディスクが使われる。これは、 DVDなどコピープロテクトがかかった映像も、UMDで発売 されれば見ることができる。しかし、PSP本体では録画する ことができないようだ。 PS2は DVD を普及させたが、 PSPはポータブルプレイヤーを普及させることは難しい かもしれない。

[リンク]。
http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0407/27/news037.html?c


週刊 IT ニュース&コラム 2004/7/20
Borland が、VB, C# 向けの格安の UML ツールを発売

2004年7月6日、開発環境大手のボーランドが、UMLのモデリング ツール「Borland Together Edition for Microsoft Visual Studio .NET 2.0」の日本語版の出荷を開始した。

UMLは、ソフトウェア開発における標準的な図法である。 オブジェクト指向という設計方法論に基づいており、 大規模で複雑なソフトウェアであっても容易に理解できる 図を描くことができる、非常に優れた図法だ。

UML に基づいてグラフィカルにソフトウェアを設計するツール (CASE ツール)は、コンパイラの開発環境の最上位バージョンに 付属してきた。つまり、何十万という値段がするのだった。 しかし、ボーランドの戦略によって、3万という価格破壊を 起こしたのだ。

Borland Together Edition は、JBuilder X Developer という Java 用の CASEツールとして 8万ほどで販売してきた。 今回は、VBまたはC# という Java のライバルの言語であるし、 しかも、マイクロソフト製 Visual Studio .NET にプラグイン する形になっている。 それなのに、安い価格設定にしたのは、 非常に戦略的な匂いがする。 最新の C# 言語は、オープンな 試用であるが、ベンダーはマイクロソフトしかいない。 そして、本屋には、Java 言語の本と並んで C#言語の本が 非常に多い。 つまり、今後、C#が主流になる可能性があるのだ。 そうなると、ボーランドの未来は無くなってしまう。 以前、ボーランドがマイクロソフトと提携を行ったのだが、 その成果が今回のツールというわけだ。

[リンク]。
http://ascii24.com/news/i/soft/article/2004/07/06/650474-000.html


週刊 IT ニュース&コラム 2004/7/5
日本でもGIF特許が期限切れ、フリーのGIF対応アプリが復活

2004年6月20日、画像フォーマット「GIF」の特許が切れ、フリーの 画像ソフトの多くが GIF フォーマットを再び扱えるようになった。 なお、アメリカでは1年前にすでに切れていた。7月7日にカナダの 特許も切れて、全世界の特許が切れる。

OpenOffice.org の日本語版、画像ブラウザ「Susie」がGIFに対応し、 GIF/MNGアニメ作成ツール「Giam」が復活した。

特許を保有していた UNISYS は、特許の延長の申請を行う手もあっ たが、それを行わなかったようだ。 当初、フリーソフトに特許料 請求は行わないと言っておきながら、5000ドル(約50万円強) を請求すると言い出し、UNISYSへの批判が高まった。 そんな 批判を受けてまで特許料を徴収しても得策ではないと判断したの だろう。

UNISYSが特許を行使した直後は、ホームページに使える画像 フォーマットは、JPEGかGIFしか無かったため、GIFが使えないと 困ることが多かった。 なぜなら文字や単純な図形を JPEG 画像に すると、スモーキーノイズが発生してしまうことと、ファイルサイズ が小さくならないからだ。 そこで、PNGというフリーの画像 フォーマットが急遽出現し、多くのブラウザに搭載されるように なった。 現在では、PNGが普及しているため、特許が切れても GIFは画像フォーマットの1つでしかなくなってしまっている。

特許は、需要を満たす新しいものを開発することを、促進させる ために存在している。 発明に非常に苦労するものもある一方、 大した発明ではないこともある。多くは後者だろう。そのため、 大した発明でもないのに、ライセンス料が高すぎるという批判が よく起きる。 阪神優勝の商標も同じような批判が起きた。 特許も商標も早い者勝ちが原則であるが、早い者しか使えない ことはない。 場合によっては裁判によって無効になることが あるし、両者の合意によってライセンスを結ぶこともある。 ライバルの場合はライセンスは得られないだろうが、パートナー であれば得られるだろう。 そしてライバルであっても、 PNGフォーマットのように、特許を回避して別の方法で同じ要求を 満たすことも考えられるし、JPEGを使って、GIFは使わないで 済ませることも考えられる。

いろいろ考えて特許とうまく付き合っていただきたいが、 特許だけが新しいものを開発することを促進するとは限らない。 それが、フリーソフトやオープンソースだ。 だれでも自由に 使えるものがたくさんあれば、すごいものでも安く作れるためだ。 タダで入手できれば消費者に喜ばれ、それを作った人は尊敬を集め、 お金に代わる報酬を得られるために発展した。 ただ、多くの オープンソース開発者は、お金に代わる報酬を得るために、 著作権を放棄していない。 ソフトウェア技術の発展に寄与する ボランティアではないと言う人が多い。 Linux関係は、関連ビジネス のためにオープンソースという手段をとっているのだ。なので、 ボランティアを行っている人と同等に賞賛してはならないのだ。 多くの場合、特許と同様に、著作権によってその利用(特に商用 利用)を制限している。結局、ライセンスを取得するのと同じような 手続きが必要となるのだ。

ちなみに、著者が開発した SVG Cats 2は、シェアウェアだが、 ソースの一部を他に流用することは完全に自由にしている。 その部分だけ見れば GNUよりライセンスが緩やかである。