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週刊 IT ニュース&コラム 2003/06/30
全米レコード協会がファイル共有の個人を対象にした訴訟活動を開始

2003年6月26日、全米レコード協会(RIAA)は、WinMX等のファイル共有ソフト を使って違法にファイルを共有している個人ユーザに対して、訴訟を起こす ための証拠集めを開始すると発表した。早ければ8月にも訴訟を起こすという。

ファイル交換ソフトは、匿名性をある程度持っているが完璧ではない。 RIAAは、証拠集めとして特殊なソフトウェアをネットワーク上に配置し、 公開されているディレクトリをスキャンしていくという。 検出されたアカウント情報をもとに、ISP(インターネット・サービス・ プロバイダ)から住所情報を取得し、本人を特定するという。 なお、ISPが個人情報を公開することに一見問題がありそうだが、 デジタルミレニアム著作権法(DCMA)によってRIAAの行動は認められている。

ファイル共有ソフトは、バージョンアップを繰り返し、匿名性が ますます上がってきている。 このファイル交換ネットワークを 無くすことは不可能になっていると言う見方が多くなってきており、 各種コンテンツ・プロバイダは、逆にそのネットワークを利用した 宣伝を考慮しているところもあるという。

しかし、これはイタチごっこで、突然匿名性が破られる技術が現れる 可能性が無いとも言い切れない。 古いソフトを使っていると、 本人が知らない間に証拠が集めれれ、ある日突然告訴されることも 考えられる。 RIAAが証拠を集める方法はもちろん非公開だ。 日本が対象になることは無いだろうが、JASRACが参考にすることは 間違いない。

ファイル共有ソフトが普及している理由は、無料で違法にコンテンツが 入手できるだけではない。 アーティスト名を入力するだけで、 コンテンツが一覧でき、簡単な操作でダウンロードできるのも理由の 1つだろう。 たとえば昔買ったCDが見つかったら、倉庫から取り出すのが 面倒だから、ファイル共有ソフトでダウンロードしてしまうことも あるだろう。 現在、ネットワークの音楽コンテンツが売られているが、 独自のブラウザを使う必要があるなど、扱いが面倒だ。 CCCDの普及により、 ネットワークコンテンツになっていないアルバムがパソコンで聞けない こともある。 このときに、ファイル共有ソフトを使うこともあるだろう。 これが違法であるかどうかは分からないが、訴訟の対象になると考える ところが多いだろう。

タダでさえ、音楽コンテンツの売り上げは、DVDなどのコンテンツに比べて 市場規模が小さくなってきている。 ファイル交換ソフトの普及も 1つの原因だが、DVDの普及などによりCDの価格が高いと見る人が 多くなったのもあるだろう。 しばらくは、RIAAの動きに注目と言うところだ。

[リンク]。
RIAA、違法ファイル共有の個人を対象にした訴訟活動を開始。
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2003/0626/riaa.htm


週刊 IT ニュース&コラム 2003/06/16
電子申込み用紙に対応した Adobe Reader 6.0 日本語版がリリース

2003年6月11日、アドビシステムズ(株)は、PDF ビューアである Adobe Reader の日本語版をリリースした。 バージョンが 6.0 に上がり、名前も Acrobat Reader から Adobe Reader(アドビー・リーダー) に変わった。 もちろん今までどおり無料で使用できる。 なお、Acrobat 6.0 は 7月4日リリース予定。

公式文書の配布といえば PDF ファイルだ。これを見るために、ほとんどの パソコンには Acrobat Reader がインストールされ、ブラウザに次ぐ よく使うツールだ。 それが、6.0 になって、操作性や見やすさが向上したようだ。 拡大縮小ボタンを使い、ページをドラッグしてスクロールすることさえ マスターすれば、ストレス無く文書を閲覧することが出来るだろう。 ダイナミック・ズームを使えば、好きな拡大率に簡単に調節できる。 フォントのスムージングも好みに設定できるため、小さな文字でもかなり 読みやすくなった。 画像にもスムージングがかけて見やすくなった。 検索機能は、開いている PDF だけでなく、いくつかの PDF をまとめて検索 できるようになり、検索結果も一覧できるようになった。

名前が Adobe Reader に変わったのは、PDF 以外のファイルも閲覧できる ようになったからだ。 Flashや MP3 が埋め込まれた PDF(PDF1.5) や、 eBoot も閲覧できるようになった。 また、入力フォームにも対応し、 今まで申込み用紙を印刷して FAX していたものが、直接インターネット で、申し込みできるようになった。 Power Point の無料ビューアが無いため、 スライドショーを PDF にすることが多く、スライドショーらしくなくなって しまっていたが、スライドショー形式のPDF の表示も出来るようになった。 ただし、これらのファイルの作成には、新しい Adobe社製のツールが必要に なるようだ。

この展開は、MSに似た抱き合わせ商法に近くなったと考えられる。 特に eBook の対応は、数ある電子ブック・フォーマットの標準を 狙うものだ。 これをどう考えるかは、読者にお任せする。

フォームに対応したことで、HTML の Web サービスに置き換わる 可能性が出てくることになったと考えられる。 つまり、インターネット のブラウザよりも Adobe Reader をよく使うようになることだ。 しかし、その可能性は、低いだろう。 PDF は、以前からハイパーリンク に対応しているが、新しい Reader でもその操作性は向上していない。 ハイパーリンクが大量にあるページでは、PDFのデータサイズは、 HTMLより大きくなるし、ページジャンプしたときの速度も遅い。 外部ファイルから PDF の途中へのジャンプも相変わらずできない。 そういった文書は、依然として HTML で配布したほうがいいだろう。 HTML は画像ファイルなどがバラバラになるため、圧縮ファイルに まとめられることに多いのだが、このとき Archives Folderizer SV というツールが役に立つ。

相変わらず、PDF は、パソコンで見る検索性に優れたフォーマットではなく、 紙のドキュメントをパソコンで見る、という立場であると見ていいだろう。 フォームに対応したことで、今まで、申し込み先の表現は Web への小さなリンク だったものが、PDF の1ページ全体に大きく表現できるように なったことで、申し込みする人が多少増える効果はあるだろうが、 それだけの違いだ。 検索ツールが強力になったが、基本的に全文検索なので、 検索対象の構成によっては、検索結果の精度に技術的な限界がある。

ただ、ここ最近の技術動向を見ると、キーボードより非効率的な手書き入力や、 読みやすいとはいえない他人の手書き文字が校正に適しているように、効率的な 操作性を犠牲にしても、自然な操作性が求められるようになってきている。 つまり、紙をベースにしていることや、印刷してそのままのイメージになる ことは、以前から PDF の特徴であったが、改めてメリットが認識されるように なるのかもしれない。 HTML のようにページの途中へダイレクトジャンプが できないが、キーワードによる検索の結果表示に適したフォーマットの文書で あれば、文書のやや前半といった右脳的な記憶が出来るので、文書全体の理解が 深まるという考えもできる。 いかに、効率的にパソコンの操作をしやすくするか、 ではなく、いかに紙のようにリアルにあるものをパソコンに取り入れるか であるかが、将来のパソコンに求められることなのではないだろうか。

[リンク]。
アドビ、PDF表示・印刷ソフトの最新版「Adobe Reader」v6.0 日本語版をリリース。
http://www.forest.impress.co.jp/article/2003/06/11/adobereader.html


週刊 IT ニュース&コラム 2003/06/02
プレステ2がデジタル家電をすべて飲み込む?PSX発表

2003年5月28日、ソニーは、プレイステーション2を内蔵した、 新しいAVネットワーク端末のプラットフォーム「PSX」を発表した。 年内に発売する予定。

PSXは、DVDレコーダーのとゲーム機とインターネット端末をまとめた、 もはや何でもアリの製品だ。しかも高速なゲーム機のチップを使うことで、 DVDも軽快に操作できると言う。デジタル家電特有の遅さは無くなり、 さらにPS2の強力な表現力を持ったメニューが搭載されると言う。

多くの人は、PS2をDVDプレイヤーとしてしか使っていないのではないかと 私は推測している。そう考えると、DVD機能が強化されたこの商品は、 魅力的ではないかと思う。

しかし、そういったユーザがPS2を買った理由は、当時の最新の DVDプレイヤーよりも安かったし、ゲームもできるからお得だったからだ。 つまり、PSXの価格によっては、爆発的な普及になるかも知れないし、 一時的なブームに終わる可能性もある。それに、現在、DVDレコーダーは 急速に普及しており、PS2のパワーユーザならすでに持っていると思われる。 単にユーザインターフェイスが高速になっただけでは、購入の動機には ならないと思うからだ。

逆に、DVDレコーダーのヘビーユーザーなら、ユーザーインターフェイスの 出来によっては、非常に魅力的な商品になる。 思い通りにサクサク編集できる 感覚が得られるうわさが広がれば、ゲーマーよりお金を持っているAVマニアを 惹きつけることが十分に出来るからだ。

そして、ネットワークに接続できると言うことは、著作権管理も容易になる。 ダウンロードで曲を購入したら、特に何もしなくてもすぐに曲が聴ける ようになるだろう。 きっと、ネットワークウォークマンにも簡単にコピー できるようになるだろう。 後は、自動車のコンポにコピーできるように なれば、曲のダウンロード販売も急速に普及するだろう。

[リンク]。
ソニー、2003年度経営方針説明会で新プラットフォーム「PSX」を公開。
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20030528/sony1.htm


週刊 IT ニュース&コラム 2003/05/19
テレビに続き、プレステ2で電子決済サービス

2003年5月14日、ソニーファイナンスインターナショナルは、 プレイステーション2のネットワーク機能を使った電子決済 サービス「feega」を6月から提供することを発表した。

装置は、PS2のほかに、ネットワークアダプタと、 ハードディスクが必要となる。どれも、現在発売中のもの だが、アダプタが単体で発売されるようになった。 アダプタは3,980円、アダプタ、HDDのセットが12,800円、 アダプタ、HDD、PS2のセットが35,000円。

PS2は、ここ最近、オンラインゲームの普及に力を入れている。 たとえば、ゴルフゲームをネットワークに対応した。 PS2初のオンラインゲーム FF11 は、ネットワークに参加する ために会費を支払っているが、こういった支払いをオンライン で行うことが最も使われるケースだろう。

4月17日、松下電器は、デジタルテレビからネットワーク接続し、 生活情報などのオンラインサービス「Tナビ」を開始した。

iモード, Lモード, G-Book など、電化製品から簡単に ネットワークサービスに入ることができる製品が 数多く発売されてきている。 すでに BSデジタルで ネットワークサービスが始まっているが、商業的な 色合いが強いテレビのサービスは、これが初めてだ。

携帯電話では、着メロやゲーム、テレビ番組と直結したサイトが 商業的に成立しているものの代表だろう。 目的の電子コンテンツが どうしても見たくなる入手したくなるという気持ちが出てくるもの ばかりだ。こういったコンテンツが出てくる可能性が高いが、 携帯より機能的に充実しているテレビであれば、 質の高いコンテンツが流通することだろう。

パソコンと異なり、リモコンで誰でも使えるようにする方法を 模索しているようだ。 Tナビも、携帯電話をベースにしている。 どちらも、ADSLやFTTHをベースとしている。 急速に普及している ことを受けて、ネットワーク対応家電が発売され始めてきているようだ。

[リンク]。
PS2対応の電子決済サービスが6月にスタート。
http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/leaf/CID/onair/biztech/elec/246942

デジタルテレビ向けのネットサービス『Tナビ』サービスを開始。
http://panasonic.co.jp/enet/news/030417.html


週刊 IT ニュース&コラム 2003/05/05
次世代オフィスソフト「Office 2003」の概要を発表

2003年4月21日、マイクロソフトは、次期統合オフィスソフト 「Microsoft Office 2003」の概要を発表した。なお、このバージョンは、 Office XP の次期バージョンである。

マイクロソフトは、以前から Office をデータ連携や情報共有のツールに しようとしてきているが、活用できている人は少ないだろう。 今回も XML が 機能強化のポイントとして挙げられている。 XMLツリーが表示される ようになったり、ユーザ定義スキーマのサポートが追加されたため、 XMLらしくなったといえるだろう。

新しいプログラムとして、Infopath や OneNote が追加された。 Infopath は、フォーム形式のデータ入力を専門に扱うデザイン ツールだ。Office Enterprice のみに付属するので、一般の ユーザには触れる機会は少ないかもしれない。 OneNoteは、TabletPCにも対応した高度なメモ帳プログラムだ。 保存の操作をしなくても自動的に保存する。 任意の位置にフラグを設定でき、それらをまとめた情報を 見ることができる。

編集や閲覧が可能なユーザを制限することができるようになり、 秘密をシステム的に保障してくれるようになった。(Professional版以上)

多くの機能は、他社より、開発ツールや文章管理システムとして 発売されているものだ。 そのため、目新しさは少ない。 マイクロソフトのツールで統一したときの連携のよさに 期待できるかもしれない。

[画像へのリンク]。
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0421/ms2.htm


週刊 IT ニュース&コラム 2003/03/31
ベーマガが休刊

2003年3月25日、電波新聞社は、マイコンBASICマガジンの休刊を 発表した。4月8日発売の2003年5月号が最終号で通巻251号、 21年の幕を閉じる。

マイコンBASICマガジンは、ベーマガと呼ばれ長年プログラミング 雑誌として愛読されてきた雑誌。 1982年に創刊され、プログラム 投稿誌としてリードしてきた。 創刊当時は CD-ROM など無く、 フロッピーも無いので、プログラムはソースコードが紙面に プリントされていた。 現在では、CD-ROM を入れれば、 オンラインソフトがすぐに遊べたが、当時はプログラムを 入力しなければ楽しむことができなかった。

登校されたプログラムはゲームがメインだった。当時の マシンパワーでは実用的なプログラムはできなかったのだが、 ファミコンも登場していなかったので、 ゲームしたさにプログラミングをしたものだ。 多くのキッズや学生がプログラミングのきっかけとなり、 プログラミング経験者を多数生み出したと言っていいだろう。 その精神のためか、休刊になるまで、CD-ROMなどのメディアを 付けることは無かった。 現在ではソニーもスポンサーに なって支えてきた。

当時に比べ、規模が大きなプログラムが世の中にあふれる ようになると、プログラミングをして完成したとしても、 達成感はあまり無いだろう。 しかし、マイナーではあるが、 現在でも同じような体験は可能だ。 たとえば、JPEG 画像を 展開するフリーウェアやファイル圧縮解凍のDLLもフリーで 公開されている。 最新のタブレットPCのSDKも無料で公開され、 TabletPC.jp では、プログラミングレスで作れる方法まで 公開されている。

インターネットが普及し、無料で多くの情報が得られるようになり、 出版業界はダメージを受けている。これも休刊になった 要因の1つだろう。

プログラミングをしていくには、達成感を求める強い モチベーションが必要だ。 私もモチベーションが上がるのは、 年に1回ぐらいだ。 ある数ヶ月はプログラミングに集中できるが、 数ヶ月一度もプログラミングしないこともある。 しかし、いきなり強いモチベーションを得られることは無い。 まず、ちょっとした小さなプログラムを作ってみて、 それが捨てられることもあるが、凝ってみたいと思うこともある。 そうやってモチベーションは育っていく。

プログラミング・マニアが育つ土台がなくなったように、 それ以前では回路マニアが育つ土台がなくなっている。 時代は変わって、マニアの対象が変わっていく。 ベーマガが休刊になったところで、嘆くことは無いだろう。

現在ではプログラマの求人は比較的あり、プログラミングは 技術と言われているが、当時は遊びに近かった。 現在、遊びと呼ばれているものが、将来必要な技術に なるかもしれない。 コピーバンドのように、始めは他人の 作ったものを真似るものだ。 ここを著作権で縛り過ぎるのは 考えものだ。 かといって、プログラミングコンテストが あったとしても企画ではモチベーションが上がらない。 賞金がかかると別のモチベーションがあがるものだ。 人それぞれ何に興味を持つかわからない。普段から、 好奇心を刺激するような、内部情報のようなものが世の中に あればいいと考えている。 ファイル共有の裏マニュアルと いった雑誌があふれてきて、多くの人の好奇心を刺激している。 コピー自体は良くないが、コピーバンドのようなクリエーターが 生まれてくる土台でもある。結果的に著作権や肖像権の 勉強になった人もいるだろう。しかし、裏は裏でしか活躍できない。

当時のベーマガも怪しい雰囲気のある雑誌だった。しかし、現在では、 多くの技術者の登竜門となる誇らしいものとなっている。 裏を賞賛するわけには行かないが、うまく、表と裏を使い分け られる者が、技術を支えていくのだろう。

[リンク]。
マイコンBASICマガジンのHP


週刊 IT ニュース&コラム 2003/03/17
ソニー、世界初のブルーレイディスクレコーダーの発売を決定

2003年3月3日、ソニーは、青色レーザー(ブルーレイ)を使った 記録ディスクに対応した録画装置 BDZ-S77 を、4月10日に 発売することを発表した。価格は 45万円。

ブルーレイ・ディスクは、DVD の約4.8倍の 23GB の容量を持つ。 そのため、長時間録画ができたり、高品質の画像で録画できる ようになる。上書き記録も可能だ。 価格は1枚3500円。 ハードディスクは内蔵していない。DVD, CD も再生可能だ。

BSデジタルと地上波放送のチューナーを搭載する。 EPGに 対応しているので、テレビで番組表を見ることができる。

地上波を標準画質で録画する場合、1枚で 6時間録画することができる。 録画は、BSデジタルで 使われている MPEG-2 TS なので、 現在主流のものより良い画質が得られるだろう。 特に、BSデジタルでは、オリジナルの画質を劣化させることなく ダイレクトに記録することができる。 BSマルチビュー (3画面分)でも2時間録画できる。 地上波用のゴーストリダクションや、 MPEG特有のブロックのノイズを抑えるLSIも搭載する。 画質へのこだわりがこれでもかと感じるほど最新LSIを内蔵している。

録画した番組を編集することも可能だ。 オリジナルの映像を 消去しないバーチャル編集も可能だ。

最新技術だけあって、非常に高価だ。ブルーレイ・ディスクも、 DVD-Rが高価だったときよりも更に高価だ。プラズマ・ディスプレイを 買える余裕のある人が、大きな画面で録画した放送を見たとき、 画質に不満がある人がターゲットだろう。 しかも、市販されている 映画などのコンテンツがブルーレイ・ディスクで提供されることではなく、 あまり普及していないBSデジタル放送がそのままの高画質で録画できる ことなので、ブルーレイ・ディスクの実力が発揮されるケースは 非常にまれだ。 地上波デジタルへの対応状況は不明だが、 地上波デジタルが開始されると、その画質に対応した録画装置が 欲しくなるものだ。 そのとき、DVD 録画では不満を感じるように なるかもしれない。 DVDは一般の家庭でも買えるような価格帯に なってきたので、比較的裕福で高級機を求める人に受け入れられる かもしれない。

[プレスリリース]。
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200303/03-0303/


週刊 IT ニュース&コラム 2003/03/02
人間協調・共存ロボットシステムの研究成果を発表

2003年2月26日、独立法人・産業技術総合研究所は、経済産業省が 実施している「人間協調・共存ロボットシステムの研究開発 (HRP:Humanoid Robotics Project)」の最終成果を発表した。 なお、このプロジェクトは、今年3月に完了となる。

ロボットの使用目的は、「対人サービス動作」、「留守宅管理作業」、 「人間との共同作業」、「建設機械の代行運転」、「プラントの保守・点検作業」 である。研究では、その実現可能性をさぐり、基盤を提供していくことであった。 そのハードウェア基盤が、ホンダの人型ロボットをベースとした HRP-1、 独自に改良していった HRP-2、ソフトウェア基盤が OpenHRP である。 HRP-2以降の仕様は公開され、改良していく予定になっている。

成果として発表されたロボットは、単に歩くだけでなく、建設機械の 代行運転に必要な手や腕のコントロール、でこぼこした地面での歩行、 転倒したときに自分や周りの被害が少なくなるような姿勢制御が 考慮されている。 転倒制御の実験では、きちんと尻餅をついて、 自力で起き上がる様子まで公開された。 雨の中では、専用のカッパを着るらしい。 これらの様子は、後記の URLから動画で見ることができる。

ロボットの動きは、思ったより複雑な動きにも対応しているようだ。 まだ、人間の動きには及ばないが、1つ1つの対応パターンを 積み重ねていくことで、最終的には走ったり反射的にもモノに つかまったりしていくだろう。 人工知能は、体験のデータベースが 無いために人間らしい考えができないことに行き詰っているが、 ロボットの成長に従って前進していくだろう。 今のところ、 論理的思考より、ロボットの周りにある障害物を認識することに 需要があるように思う。 多くのデモは、あらかじめ部屋の特徴や 巡回ルートを入力しておく必要があった。 カメラで障害物の 形状を認識したり、歩きながら道順を認識したりという、 頭の中で三次元モデルを形成する技術が、今後のロボット技術の 発展のキーになるだろう。 もちろん、そういったプロジェクトは 始まっている。

パソコンでのこういった認識の技術は、日本語変換から始まり、 手書き認識、音声認識などが昔からある。IT乗用車では、料金所や 車線を認識して運転を補助するものもある。 これらは、画像認識など 感覚系から得られるデータだけで100%の認識率を出すことは 不可能である。 日本語変換や文字認識では、センテンス、 つまり、時間的、空間的に総合して判断する必要がある。 しかし、それでも100%になるのは不可能だ。

ロボットに得意なこと不得意なことがあるように、人間も 人によって得意なこと不得意なことがある。 不得意なことに 挑戦するときはどうするだろう。 それは得意な人に聞くことである。 人間に得意なことに判断をゆだねることも賢い判断になる。 製品段階では、こういった支援要求機能をいかに少なくするか、 誤認識の修正をいかに効率的にできるかがキーとなるだろう。 研究所レベルでは体験できないことがある。 そのときに ロボットに情報を与えることが専門家にしかできないので あれば使い物にならない。

学習技術というと日本語変換の履歴データを参考にする、 録音した音声を単語登録するといった安っぽい響きがあるが、 丸暗記的な学習ではだめだ。 入力データのそれぞれの 構成要素がどういう意味を持つかといったことを体系化し、 学習することをしなければ、ロボット技術の発展はライバルに いずれ抜かれるだろう。 プログラムの分野でいえば、ケース ツールやソース・ジェネレータだ。 人間に入力や認識しやすい形で プログラムを入力、つまり学習させるシステムを作ったものが 性能のよいロボットを生み出すことになるだろう。

[動画へのリンク]。
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0227/hrp.htm


週刊 IT ニュース&コラム 2003/02/17
ゲームボーイ・アドバンスでコンテンツを見るアダプタを発表

2003年 2月4日、am3は、ゲームボーイ・アドバンスでスマートメディアに 入ったコンテンツを見るためのアダプタを発表した。 コンテンツは、 コンビニなどに設置された装置を使ってスマートメディアに書き込む予定。 コンテンツは、e-Book, e-マンガ, ミュージッククリップなど。 アダプタは¥2800, 専用スマートメディアは¥2000。コンテンツは¥200から。 当初は、アダプタ+メディア+コンテンツをセットにしたものを売る。 著作権保護技術を持つ。

電子書籍は、かなり以前から未来の書籍として注目され続けてきたが、 依然として普及していないのが現状だろう。 これは、ペーパーレスが 実現されていないのと同じ理由があると考えられる。

電子書籍は形がない。 インターネットで手軽にダウンロードできても、 それが有形のものではないから、どうしても財布をきつくしてしまう。 それに、通常は著作権保護技術のために、使い慣れている インターネット・ブラウザが使えないため、そのコンテンツが心地良く 見ることができるかが心配になってしまう。 フォントが見にくかったり、 画像の解像度が高すぎたり低すぎたりすると、単に読んでいくことさえ 面倒になる可能性がある。 新しいメディアは、このハードルを超える 必要があるが、今回のものはどうだろうか。

コンテンツは、スマートメディアというデジカメのメディアの一種に 入れられる。このメディアは非常に薄いという特徴があり、CDやMD と比べると非常にコンパクトだ。 当初は、このメディアにコンテンツが 入ったものが発売されるということから、CD や DVD と同じ感覚で 買うことができるだろう。

問題は値段だ。 CDは、CD-Rでさえ¥60で済むので、CD と同じような 価格帯を狙うのであれば、コンテンツにお金をかけることができない。 発表でも、コンテンツは¥200からということなので、シングルCDと 同じぐらいの内容になると予想される。 ただ、宣伝を兼ねた、 CD/DVD付き書籍のようなコンテンツであれば、この値段でも可能だろう。 しかし、ユーザにとっては、それはオマケ=タダという感覚がある。 宣伝のようなコンテンツを目的としてわざわざ購入することは ないだろう。 DVD さえ、PS2が登場しなければ、プレイヤーが普及 しないために、現在のように普及しなかっただろう。 スマートメディアのために、専用アダプタが必要だということは、 普及のために同様の壁があるということだ。 ゲームボーイのカセットを メディアにしなかった理由はどこにあるのだろうか。 スマートメディアを CD/DVD の延長として考えることは難しそうだ。

MDは、個人で好きな音楽を録音できるという特徴がある。スマート メディアもその特徴を生かすことができる。 しかし、 MDは、録音ができるから普及したのではない。 テープというメディアに比べて、デジタルの音の良さ、ランダム アクセスによる扱いの簡単さ、ディスクのカッコよさ、などが あったから普及したと私は考えている。 スマートメディアには映像を入れることをメインに考えていると いうことなので、CDに対するMDのように、DVD(VideoCD)に対する スマートメディアと考えることができるかもしれない。 しかし、著作権技術の関係で、個人で好きなコンテンツを入れる ことはできないようにしているという。

秋葉原では、地味ながら、MDに音楽をダウンロードする自動販売機が 置いてある。 あまり普及しているとは言えないが、好きな音楽を 通常のシングルより安く売っているので、うまく活用すれば 少ない小遣いの中で多くのコンテンツを楽しめる。 おそらく、今回発表されたスマートメディアでは、このような 使い方を想定していると思われる。

コンビニでゲームを販売しているのはご存知だろう。 映像でゲームの CMを流しているアレである。 しかし、最近はその放送をやめたことに 気づいただろうか。 大作ゲームの予約は、順調に行われているようだが、 それ以外は、あまり順調ではないと思われる。 チケット予約が できる端末を置いているところもあるようだが、置いてないところが 半数以上だ。 電話や店員に頼むことでチケットを購入できるように しているところが主流だろう。 端末にお金をかけていられないのだ。

動画の品質はどうだろうか。ゲームボーイ・アドバンスの解像度は、 240x160ピクセルなので、テレビの半分だ。データが圧縮されているし、 ゲームボーイの性能から見れば、滑らかな動きも期待できないだろう。 実物を見たわけではないので、意見を言える立場ではないかもしれないが、 ゲームボーイで映像に期待する人はいないだろう。 映画の販売も DVDが普及して初めて普及したことを考えると、 動画コンテンツを買う行為は、非常にハードルが高い。 (もちろん、解像度以外にもハードルはあるが。) この解像度では、マンガを見るのも不可能だろう。解像度に合わせた コンテンツに移植するには、コストが高すぎる。

電子書籍はコストをかけずに移植できるだろう。 ゲームボーイ・アドバンスは、主に子供が持っているため、 コンテンツは子供をターゲットにしたものになる。 アニメやゲームとメディアミックスした小説がいいだろう。 重要なのは、挿絵だ。低い解像度で、いかに表現するかが問題だ。 ゲーマーをターゲットにするなら、攻略情報やスーパープレイ映像を コンテンツにするといいかもしれない。 携帯電話の電子書籍サービスは以前からあるため、やはりターゲットは 携帯電話を持てない子供になるだろう。

ゲームボーイアドバンスだけで、コンテンツが見ることが できるのであれば、電子書籍として大きな市場が誕生することに なるのだが、残念ながらアダプタとメディアが必要だ。 ソフト1本分の値段で買うことができるのだが、それに見合う コンテンツがあるのだろうか。

[画像へのリンク]。
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/12681.html


週刊 IT ニュース&コラム 2003/02/03
Windows Media Player 9 公開

2003年 1月29日、マイクロソフトは、日本語版 Windows Media 9 シリーズを 発表し公開した。 マイクロソフトのホームページから無料でダウンロード することができる。

なお、Windows XP ではない Windows にインストールすると、多くの新機能が 使えない。 オーディオ関係の OS の機能が不足しているためなのだろうか。

今回のバージョンアップで、WMA,WMVフォーマットの音質が良くなり、圧縮効率が 上がったと言われている。 音声の 5.1ch に対応したこと、フレームとフレームの間を 補完をすることなどがそれにあたるだろう。 しかし、圧縮技術がそれほど短時間に 劇的に変わることはない。 CDから録音するときにデフォルトのビットレートを56K から128Kに上がっているので、録音したときの音が良くなったと勘違いする人が いるかもしれないが、今回の圧縮技術の進歩は10%〜30%ぐらいと言われており、 聞き分けられる人はまずいないだろう。 とはいえ、市販のMP3レコーダーソフト よりは、WMA録音したときの方が音質がいい。(と思う)

映像や音の質の話はむずかしいので、プレイヤーについて話そう。 メニューの [ 表示 | 拡張設定 ] の部分がメインだ。

プレイヤーも地味ながら進化して楽しめるようになった。 面白いのは、クロスフェード機能だ(XP専用)。 この機能は、 もうすぐ曲が終わりそうになったら、次の曲を鳴らし始める。 つまり、ラジオなどで連続して曲が流れるとき、フェードアウトしながら 次の曲がフェードインすることと同じようになる。 この機能を持ったオーディオ・コンポは昔からあるので、技術的に新しいこと ではないのだが、大容量のハードディスクから音楽を永遠と鳴らすことができると、 また違った楽しみ方ができるだろう。

可変速再生も XP専用だ。これは、2〜16倍速再生する機能だ。単純に2倍速に すると音が高くなってしまうものだが、ビデオの倍速再生機能のように音が 高くならないようになっている。 中には音を細かく飛ばしているビデオもあるが、 Media Player は、きちんと音飛びがなく再生した。 なお、2〜16倍遅く 再生することもできる。

著作権管理機能が強化されたことが言われているが、CDから、著作権保護しない WMAファイルを作成することは、相変わらずできる。 これは一般のAV家電と同じ ように、レコーダーに制限をつけるのではなく、著作者が配布する CD(CCCD)に 制限をつけるという考えだ。 ただし、Media Player では、著作権を理解して いるか確認した上で著作権保護をしないで記録できるようになった。 強化されたのは、CCCDに携帯音楽プレイヤーに転送できるかどうかを指定できる ようになったことだけかもしれない。

可逆圧縮、つまり音の劣化がない録音もできるようになった。 このとき、 通常より10倍近くファイルサイズが大きくなるが、CDを完璧に、HDDやDVDに コンパクトに保存する人には使える機能だろう。これもXP専用だ。 CDをリッピングして WAV ファイルを作成して、一般のファイル圧縮をしたときと、 圧縮率にどれくらい差が出るかはやってみないとわからないが、あまり 変わらないのではないのだろうか。ただ、ファイルの扱いが便利になる(だろう) ことが違いになるかもしれない。

ビデオの色合いや明るさなどを調節できるようになった。これは、XP専用ではない。 ビデオカードにもよるが、コントラストなどを変更すると、フレームレート(1秒に 何枚表示するか)が極端に落ちた。DVD(MPEG2)は、相変わらず再生することが できなかったが、有料でプラグインを配布しているようだ。 DVDドライブや プリインストールにDVDプレイヤーソフトがついていることが多く、それを インストールすると Media Player でも再生できるようになっていることが 多いので、プラグインを買う人がいるか疑問だ。

とりあえず、機能アップした内容は良くわからないけど、バージョンアップして 気分が良くなった、というだけの出来事だったのだろう。 音と映像を楽しむのに、 機能アップはそれほど重要ではない。 音質や画質が良くなったと最も実感するのは、 ディスプレイやアンプを高級にしたり、ダイヤルアップから ADSL、そして光に 変えたときだからだ。 それを承知しているから無料配布しているのかもしれない。

[参考資料へのリンク]。
http://ascii24.com/news/i/soft/article/2003/01/29/641470-000.html
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0129/ms2.htm
http://www.forest.impress.co.jp/article/2003/01/29/wmp9seriesjapanese.html


週刊 IT ニュース&コラム 2003/01/20
Wintelの世界的独占を阻止せよ。政府がオープンソースの必要性を示す

2002年12月20日、イベント「オープンソースウェイ」で、経済産業省の 福田秀敬・IT産業室長は、「デジタル家電がPC化してゆくというのは 日本の競争力にとって最悪のシナリオだ」との見解を示した。

Linuxとは言わないが、オープンなものでなければ安心して使えないし、 プラットフォームがブラックボックスでは、そのメンテナンスガ非常に コストが高いことも挙げた。

これに対応し、マイクロソフトは、2003年1月14日、政府向けに ソースコードを開示する無料の GSP契約を発表した。 無料とはいえ、 企業秘密的な理由でマイクロソフトが公開を拒否する部分が出てくるだろう。

「PC化」とは、Windows のことである。Windows は、 開発力を集中させるために CPU のアーキテクチャを制限したり、 OS とアプリケーションの内部的連携を行うなど、オープンではない という噂がある。 そのため、他社まして海外のベンダーが 追い出され、入り込めない状態にある。 そのため、多くの国では Linux のようなオープンなものを推奨している。

しかし、オープンでさえあればいいかというと、私は疑問だ。

一般消費者向け電子機器の展示会である International CES では、 腕時計やメディアプレイヤーなどの電化製品にマイクロソフトが 参入することを明らかにした。 日本の得意な分野への参入だ。 おそらく、日本に対するマーケティングも強化しているだろう。 ただ、おそらく、キーボードやマウスのように最終製品は出さないで、 Windows Automotive や Smart Display のように、フレームワーク (アーキテクチャのテンプレート)をライセンス提供していくのだろうが、 今後、日本製を買っても利益はMSに行くことになりかねない。

ソフトウェア開発において、フレームワークの利用は主流に なりつつある。 情報システム系では、日本のメーカーでも 商品化しつつあるが、組み込み系では、共同開発は行われていても、 独立したフレームワーク商品は現れていない。 共同開発では、 各商品について、利益配分や所有権など面倒なことがあるため、 開発に参加しなかった企業が流用しにくい面がある。 間接業務が コスト高を招くだろう。

共同出資したソフトウェア・フレームワーク・ベンダーを作り、 マイクロソフトのように独占的地位を持たなければ、 日本のソフトウェア技術は、高くても蓄積されていかないだろう。 Linuxは、構成する各要素は無料だが、ソリューションを構成するまで コストが高い。つまり、自由競争によって品質が良い個々の部品を 持っているだけでは不十分で、フレームワークを持たなければならない。 そうしなければ、フレームワークを全般的にトレースしていく ツールが無いために開発効率も落ちる。

しかし、実際にフレームワークの仕様をガチガチに決めてしまうのは、 開発工数が多くかかるし、変化の激しいソフトウェア業界では すぐに陳腐化してしまう。 マイクロソフトのように社内で 柔軟に再利用するような、境界があいまいなフレームワークで なければ、使いにくいものとして捨てられてしまうだろう。 柔軟なフレームワークを管理するには、やはり特定の企業が 内部的に持って、自由に再利用する部分を切り分けできるように できる方がいいだろう。

日本のメーカーの間で、各分野における規模の小さな合併があるが、 そうしてできた企業を合併して日本における独占的地位、 いや、2大企業的な業界にして、効率化を行っていかなければ、 世界に対抗できないだろう。 Linuxはオープンでありながら、 ソースの公開義務や責任者不在のために採用されないことが多い。 つまりビジネス的には、オープンというのは難しく、 オカネで責任を取れるフレームワークを持った企業が必要なのだ。 いきなりそんな企業が登場するのは難しいので、ソフトウェア会社の 大規模な合併に期待したい。

[参考資料へのリンク]。
http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/leaf/CID/onair/biztech/gen/223438
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0110/ces02.htm
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0115/ms.htm