2001年 11月 22日、日立は「ユビキタスフォーラム2001」を開催した。
ユビキタスとは、自分がどこに行っても回りにコンピューターがあり、 何らかの補助をしてくれる状態のことを言う。確かに、現在の家電には 必ずマイコンが組み込まれているが、それは家電の機能を高度にするため のものであることが多いため、操作が使いにくい、めんどくさいことは 依然として残っている。ユビキタス社会では、ヒトにやさしい装置が 違和感なく便利に感じるようなものと考えられている。電気メーカーは、 何らかの機会でユビキタスというキーワードを挙げていることが多く なってきている。
フォーラムの中の1つのデモでは、レーザーポインタでクーラーを示すと、 クーラーの横にプロジェクターからの画面が表示された。その画面では、 Windows のプロパティシートのようなもので、ボタンなどをレーザー ポインタで操作することができる。その具体的な様子は、下記の URL のリンク先を参照してほしい。
クーラーにレーザーポインタを向けると、クーラーのプロパティが出る ことが特徴であるが、これは PC に家電が完全にリンクした時代が 来たときに、Windows のデスクトップからクーラーのプロパティを 探す手間が省けることと、PC を持ち歩く必要がないという効果がある。 プロジェクターで表示するのは、少々現実的ではないので、PDA を 家電に向けたときに PDA 上にプロパティを表示させるようにすれば いいだろう。また、プロパティではリモコンとインターフェイスは 変わらないので、ブラウザ技術+エージェント技術によって 対話的に家電の設定ができれば、かなり便利になるだろう。 そのときは、もちろん説明書も PDA に表示されるだろう。 ただ、日本では、PDA でなく携帯電話なのかもしれない。 音声認識技術を携帯電話に入れて、コントロールする形になる かも知れない。
家電ネットワークは、赤外線リモコンではなく電線や無線LANに なっていくという。目覚ましが鳴って、止めたらテレビがつく といったスクリプト処理も可能だ。カギを開けたら電灯をつけて エアコンが作動することもできる。そういえば、新型AIBO も PC でコントロールできた。現在でもある程度のことができるが、 専用のソフトではなく、標準的なスクリプトでコントロールできる オブジェクトになれば、協調動作ができるようになるだろう。 ただ、普及したときに悪質なウィルスが登場すると恐ろしい。 相互接続性の問題よりもセキュリティの問題のほうが解決が 難しいのではないだろうか。
フォーラムでは、ボタンが一切なく、傾けたり振ったりして コントロールする Waterscape や、手をかざすと表示される 水晶型ディスプレイなども展示していた。
2001年 11月 16日、Windows XP 日本語版の正式版が発売されると 同時に、マイクロソフトはオリコンGE 社と提携して、CD や DVD のタイトルを Windows Media Player 7 以上で表示するサービス を開始した。
さっそく、私のパソコン(Windows Me に付属の Windos Media Player 7)に私が持っている音楽 CD をパソコンで再生して、 「CD オーディオ」を選択してみたところ、約10秒であっさり曲名 リストが表示された。あまりにあっさり表示されたので、今度は 1988年(13年前)の CDを入れてみたら、古すぎたせいか表示され なかった。今度は、おしゃべり CD という特殊な CD を入れて みたら、きちんと「おしゃべり1」〜「おしゃべり12」が表示 された。洋楽、邦楽、童謡、三味線、落語、クラシックなど全ての 分野の音楽の楽曲データに対応しているというのは本当のようだ。
CD の詳細情報(歌詞?)、アーティスト情報を見る機能が Media Player についているが、私の持っている CD では表示 されなかった。これから提供していくという。 また、アメリカでは、CD のジャケットも配信しているが、日本では 著作権の関係で難しいという。
このサービスは、実はアメリカではすでに実現されているものだ。 日本ではデータの準備までできていたのだが、肝心の Media Player が日本のデータ形式に対応していないというお粗末な問題があって、 サービス開始まで今日までずれこんだらしい。
Media Player は、WMA(Windows Media Audio)形式のファイルに コピーすることができる。一部の再生ソフトを除いて、多くのソフト や MP3 プレイヤーで WMA 形式は再生できるため心配もない。 音質は MP3 よりも良く、圧縮率も高いといわれている。 ただ、Media Player が、その他の形式にコピーすることが できないため、今回の曲名サービスにより曲名を入力する手間が 省ける分、WMA 形式が普及していくと思われる。
なお、コピーした WMA ファイルは、マイドキュメント\My Music に保存される。
2001年 11月 7日、NTTコムウェア、日本ラショナルソフトウェア、 コンポーネントスクエアの3社は、オブジェクト指向技術に関する コミュニティを設立し、2002年 1月に、アットマーク IT が、同 インターネット・サイトを開くことを発表した。
NTTコムウェア社は、米ラショナルソフトウェア社と共同で構築 予定の新世代ソフトウェア開発環境を提供する。 日本ラショナル社は、オブジェクト指向技術やソフトウェア開発手法に 関する最新情報を紹介する。 コンポーネントスクエア社は、ソフトウェア コンポーネントの流通に 必要な技術規範や標準流通規格等の普及活動を展開する。 アットマーク IT は、それらの情報を取りまとめて、Web サイトを 構築する。
3社は、EJB(Enterprise Java Beans)をベースとした、インターネット ソリューションを提供している。 いわゆるエンタープライズ分野なので、 数百万円近くするコンポーネント・パッケージが技術対象になるようだ。 つまり、コンポーネントを購入するというより、技術サポートを受ける といった方が近いかもしれない。
エンタープライズ分野におけるオブジェクト指向という言葉は、 開発期間の短縮、開発コストの削減、そして柔軟性と拡張性を 実現する技術であると、耳にタコができるぐらいに紹介される。 また、値段が高価であるため、凝ったデモンストレーションを 体験することができることが多い。 少しだまされた気分になるが、 使ったほうが開発効率があがることもあるし、デバッグ実績が 無いために、デバッグで非常に苦労することもあるだろう。 購入は一種の賭けだ。
そこで、今回のオブジェクト指向コミュニティの設立は、 知名度のあるオブジェクト指向というキーワードをベースにしながら、 各社の持っている技術やツールの有用性の理解を助けることが 目的なのだろう。 確かに、ツールで使われるキーワードは、 オブジェクト指向の用語であるため、知っている人なら理解が早い。
ただ、3社から出ているコンポーネント製品は、エンタープライズ分野に 偏っている。 開発ツールも、EJB や CORBA といった、ネットワーク 環境をシミュレーションして、そうやってできたプログラムが、 そのままネットワークで動くといったように、ネットワークを 使うアプリケーションで効果を発揮するものが多い。 つまり、オブジェクト指向の基本概念とは違うところで効果が出る ために、いくらオブジェクト指向であっても、分野が違っていては 開発効率は上がらない。
コミュニティを設立することは、ソフトウェア開発技術の発展に貢献 するかもしれないが、エンタープライズ分野に偏った概念ばかりを 紹介することになったなら、本来、どの分野でも適用できるオブジェ クト指向技術が、一部の技術にのみ使えるといった誤った理解が 広がってしまうかもしれないのが心配だ。
2001年 11月 2日、アメリカ司法省と Microsoft が独禁法訴訟で 暫定的和解に達した。 その結果、Microsoft の分割案は採用されず、 Microsoft に対する規制もかなり弱いものとなった。
是正内容には、一応、Microsoft のやり方を変えるように指示している。
例えば、買ったばかりの状態の Windows に、Intenet Explorer のアイコンを
置いたことが、Netscape をブラウザを市場から追いやったことにあたる
として独禁法訴訟が始まったのだが、それを踏まえて、和解の対象となった
是正措置には、ブラウザ、電子メールソフト、メディアプレイヤー、など、
コンピュータの中心となるソフトウェアをコンピュータ・メーカーが選ぶ
ことができることがようになった。
その他に、以下の是正措置が取られている。
しかし、以下の点で問題点がある。
最後の、現状でも実施されていると言えなくもない、というのが 規制がゆるいといわれる所以だろう。 つまり、解釈によっていいのがれ することができる可能性が高いということだ。
是正措置には、一応、API の公開が義務付けられている。 しかし、開発において API を公開しているドキュメントは必要であるが、 十分ではないことは、ほとんどの開発者が認識している。 ベースとなる ソフトのソースを見ることと、そのソフトの開発者から直接話を聞くことが、 その OS を使ったソフトウェアを開発する最も早い方法だ。 契約などに よってこれが許されている開発者は、他のどの優秀な開発者よりも素早く 開発することができるほどの差があると私は考えている。 自社のパートナーを優先しようとするのは、当然の心理なので、 相変わらず、競合するソフトウェアにとっては不利な状況だ。
Microsoft を分割すれば、他社と同様に会社間の契約という形になり、 提供された情報の格差が、簡単かつ明快に証明できるのに、それを 採用しないのは、政治的な力などによって Microsoft を擁護している 者がいると考えざるを得ない。
実は、これで、是正処理が全て決まったわけではない。司法省のほかに、 米18州が和解を認めないで訴訟を続ける可能性があるからだ。 しかし、 この内容から大きく異なった結果になる可能性は低とみられている。