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weekly news column 01.04.30
NTTが P2P の意味情報ネットワーク・アーキテクチャ「SIONet」を発表

2001年 4月 27日、NTTが P2P の意味情報ネットワーク・ アーキテクチャ「SIONet」を発表した。

SIONet は、コンテンツ・プロバイダー(ファイルや情報を 提供する人)が、イベントプレースと呼ばれるものに コンテンツを投げるだけで、そのコンテンツに含まれる 意味情報と一致する情報が欲しい相手にダイレクトに届くという。

意味情報とは、たとえば、曲がコンテンツであるとすると、 曲名、アーティスト、ジャンル、価格などが 意味情報として扱われる。 このように曲の場合、Napster の改良版といわれる Gnutella と同じであるが、任意のデータが扱えるのが SIONet の特徴であるという。 とはいえ、意味情報を扱うのだから、 おそらく XML データのように、実際のデータには、 どの DTD(データ型)が使われるか、ということを 指定する必要があると推測される。

イベントプレースは、Windows ネットワークの ドメインやワークスペースと同じであろう。 イベントプレース間では、セキュリティ・チェックを 通るようになっている。

P2P で通信相手を見つけるときは、ノード(中継地点)から 次のノードへのルーティング(道筋の案内)の技術が ポイントとなる。どのノードへ中継するかを 決定するときに意味情報を使うという。 (通常のインターネットでは、IP アドレスを使う。)

P2P(ピアツーピア)方式は、クライアント・サーバ 方式ではないので、サーバ・マシンを設定する必要がない。 これは、インターネットのように世界中で1つ誰かが サーバを設置すればよい状況では、あまりメリットは無いが、 携帯端末で集まった人同士で急遽ネットワークを構成するときに メリットがある。赤外線通信が、どちらをサーバとするか 決めなくても通信ができるのは、P2P であるためだ。 その代わり、サーバが行っている処理を ノードや端末が行う必要があるため、 インターネット全体に、ある程度負担がかかる。

意味情報によるネットワークの威力は筆者はよく分からないが、 意味情報がどんな情報でもありならば、 Windows で \\machine\direcgory (マシン名+ディレクトリ)のように指定しているのを、 独特な別名で指定することができるということだ。 別名を指定できれは、ネットワークの構成に依存しない 名前でリンク先を指定することができることであり、 プロバイダや置き場所を変えても、 リンク切れが起きないということになる。

これだけでも、インターネットに応用すれば、大きな事だろう。 ただし、NTT は、Gnutella のような、ファイル交換ソフトが 氾濫してはたまらないとしており、 SIONet の仕様の公開を関係会社のみに控えている。

しかし、この問題は、誰でも(犯罪者でさえ名前を変えて) 参加できるところが問題であり、 著作権違法だけが犯罪ではないため、ファイルを交換することが 問題ではない。アメリカで Gnutella による児童ポルノの 配信が問題になっているように、情報を流すことさえ問題になる。 つまり、P2P がもたらす完全な匿名性が問題なのだ。 匿名性を無くす技術といえば、電子署名技術だ。 P2P と同時に電子署名技術を発展させ、 犯罪者を排除することができたとき、 P2P は世界レベルで普及するだろう。


weekly news column 01.04.23
NEC と松下、L モードを搭載した FAX を発売

2001年4月20日、NEC と松下電器産業は、Lモードを搭載した FAX 付き電話機を発表した。NEC は 5月18日、松下は 6月に 発売を開始する。

L モードは、NTT 東日本と NTT 西日本が提供するサービスで、 i モードと同じ Compact HTML で記述され、 オンラインバンキング、チケットの予約、電子メールなどが 利用できる。もちろん、電話と FAX も利用できる。 特に、電子メールのやり取りは FAX でまとめて 出力することができる。

L モードの L は、Lining(生活), Lady(女性), Local(地域), Large(大きいボタン) などの意味があり、 主に 30代〜50代の主婦層をターゲットとしている。

i モードと異なり、常に携帯しているわけではないので、 電子メールをリアルタイムでやり取りするケースは 少ないだろう。子機にも L モードの機能を持たせることも 考えられるが、コストがかかりりすぎるため、 NEC, 松下とも見送っている。 そもそも、i モードの携帯電話を持っていれば 済む話なので、それほど重要ではないかもしれない。 このことから、あまり普及しないのではないかと 思われがちだが、天下の NTT がサービスを続けて提供していれば、 じわじわと浸透していくかもしれない。

i モードは、[i]ボタンで始めることができる。 パソコンでは、電源を入れて、ブラウザを立ち上げて、 URL を入力しなければならないのだが、 機械の苦手な主婦層には、それさえも難しいだろう。 また、i モードは、料金徴収のしくみが確立されており、 インターネットのように毎回クレジット番号などを 入力する必要が無く、気軽に利用することができる。 L モードも、このような i モードの強みがあるだろう。

i モードは、機器を使いこなしているユーザが多いが、 L モードは、その機器をめったに触らないユーザが多くなるだろう。 それでも、必要に応じて使う機会があるだろう。 そのときに、操作方法をいかに分からせるかが問題になる。 求められるユーザインターフェイスは、いわゆるシンプルで直感的な ものではないと思う。アイコンなど抽象的なものは、 使い慣れた人にはいいが、初めて触る人には分かりにくいものだ。 説明を受けるように、きちんとした文章を読みながら操作していく スタイルになると思う。それは、パソコンにソフトをインストール するときに登場する「ウィザード」に近いものになるだろう。


weekly news column 01.04.16
米国ネット・ユーザの51%が電子申告で納税、用紙による申告を上回る

2001 年 4月 12日、米Adobe Systems の調査によると、 インターネット・ユーザの83%が、 オンラインの税申告書などの技術を信頼しているという。 また、51%が電子申告を利用したことがあるという。 一方、申告用紙を郵便で送ってもらって申告を行ったユーザは、 34%にとどまった。

電子申告を選んだ理由として、52%が「還付金を早く受け取るため」 と回答。38%は「利便性」を挙げた。 還付金を受け取ることができるのは、 インターネットの特徴であるが、それを実現しているのが評価できる。 日本で行うときに、妙な平等心理が働いて、郵便の人と同じ 時間がかかってしまわないようにしてほしいものである。

日本の国税庁の研究会の発表資料によると、 まず第一に利便性を挙げており、手続きの高速化はあまり 取り上げられていないようだ。一応、効率化という項目があるが、 あくまで省庁の事務の効率化にとどまっており、 申告者のメリットについては積極的ではない。

ちなみに、国税庁の発表資料は、 「電子政府の総合窓口」で「電子申告」のキーワードで検索して 見つけた。各省庁の発表資料を横断的に検索できるので、 行政に関する資料は、このポータルサイトから簡単に見つけられそうだ。


weekly news column 01.04.09
電子署名法が施行・電子政府の実現へ前進

2001 年 4月 1日、日本で電子署名法が施行され、 電子政府実現への法的基盤が整った。 それを受け、アットマークIT のホームページでは、 GPKI (政府の公開鍵基盤、電子署名技術)を 使った電子政府の実現方法について、特集が組まれた。

インターネットの世界では、匿名性があり、簡単に他人に 成りすますことができるのだが、高度な数学を使った 電子署名技術により、そのデータの出所を保証することができる。 電子署名技術とは、具体的に説明すると、 本人が持っている ID 番号(ID カード)や パスワードを入力(記入)しないと発行できない 暗号化されたデータが無ければ、 認証局から住所や電話番号といった データを受け取ることができないようにすることで、 本人であるかどうかを特定する技術である。

電子政府システムは次のようになるようだ。 ID や氏名や住所などの基本的なデータは、一般には公開されない 政府機関認証局が持つ。 行政サービスを受けるときは、行政サービスの ホームページのサーバが政府機関認証局に問い合わせを行う。 民間が政府の電子認証を受けるには、民間のホームページの サーバがブリッジ認証局(現在検討中)に問い合わせを行い、 さらにブリッジ認証局が政府機関認証局に問い合わせを行う。 この「問い合わせ」は、標準化されたタグを使った XML データを使う。

政府が発行した電子署名が入っている住所や電話番号といったデータは、 印鑑証明書や住民票のように、その内容を政府が保証する。 データはパソコンなどの電子機器でのみ確認ができるのだが、 非電子的な受け渡しができるように紙に出力する方法も 電子申請推進コンソーシアムで規定している。 レンタルビデオ屋に入会するときに免許証を提示する代わりに 紙に印刷した電子証明書を提示するようになるかもしれない。

あらゆる取引で政府が発行する電子署名を使うことが 考えられるが、たかだか数千円の買い物に電子署名を 使うこともないだろう。なぜなら、現在でも私企業による 電子署名サービスがあるが、サービスを受けるには お金がかかってしまい、保証代の方が高くなってしまうからだ。 このように考えると、すべてのケースで政府の電子署名による ID 番号を使うことはなく、入会時など特殊なケースを除き、 普段は会員番号を使うことになるだろう。 つまり、普段は免許証を提示しないで会員カードを 提示するように、普段は会員番号を使うのである。

そうなると、政府が発行する ID 番号から住所や電話番号を 得るというのは、個人情報の流出の観点から考えると、 セキュリティが強く、敷居が高くなるだろう。 信用と実績のある企業や団体でなければ、ブリッジ認証局が 承認をしない可能性があるからだ。

政府が発行する電子署名の場合、年齢を証明することが 大きな特徴である。 つまり、タバコなど20歳以上しか購入できないものを 購入するときに、政府の電子署名が使われるのだ。 もちろん、毎回の購入に政府の電子署名が使われるのではなく、 携帯電話やクレジットカード(電子マネー)を使って 購入することになるのだが、青年会員と未成年会員というような 分け方ができる。 結局、ID 番号やパスワードや ID カード(IC カード)を 他人に盗まれないように管理することは、 将来も変わらないだろう。

会員番号を入力することにより、住所や電話番号を入力する 機会が少なくなるだろうが、ある取引に、ID 番号と住所を 同時に入力したら、ブラックリストにそれが載ってしまい、 ID 番号だけで住所が分かってしまう危険がある。 そこで、定期的に ID とパスワードを変更することになり、 自動車免許の更新のように、ID とパスワードの変更のために、 政府機関に出向くことが、社会に浸透するかもしれない。 これも電子化することが考えられるが、これを電子化すると、 第三者によりパスワードを勝手に変えられてしまう可能性があり、 非常に危険であるからだ。いちいち、政府機関に 出向くのは面倒なことなのだが、印鑑証明や住民票などを 毎回取りに出向くよりはよくなるだろう。 ただし、自動車免許のように定期的に出向く必要な無いだろう。 電子署名を利用すると電子メールや手紙で通知するようにしてあれば、 盗まれたかどうかを知ることができるので、必要なときにのみ 変更すればよくなる。 ただし、クーリングオフができるようになっていなければ、 多大な被害を受ける可能性もあるので注意が必要だ。

法律は施行されたが、実際に政府から発行された電子署名 ID を使用する行政手続きができるまで、 国民には理解できない部分が多いのだろうが、 電子政府の実現へ向かっているのは確かだ。


weekly news column 01.04.02
オープンソース手法を取り入れたハードウェア設計団体 OpenCores

ZDNN の 2001年3月28日の記事において、 オープンソースと同じ手法で開発される ハードウェア「OpenCores」が紹介された。

最近のハードウェアの設計は、VDHL などの 言語で記述されており、シミュレータ上で 設計されることが多くなってきているので、 ソフトウェアの設計と差が無くなってきていると言われている。 設計の質によってプロセッサの速さも 違ってくるため、よりよい設計が求められている。 そこにオープンソース手法を取り入れた団体が 登場したというわけだ。

Crusoe で一躍有名になったトランスメタ社や、 MIPS アーキテクチャを提供している MIPS 社は、 主にハードウェアの設計を行っている。 OpenCores のライバルはこのような会社となるのだが、 Intel はライバルとはならないらしい。 それは、x86 のアーキテクチャに特許があるからだという。 このため、x86 用のプログラムが動くプロセッサを 製造することは、そのまま特許を侵害したことになる。

最近、ビジネス特許などが注目されたり、 プログラムも特許になったりすることが多くなったが、 特許は、特定の企業の利益を守り、技術の進歩を妨げるものである。 どちらがどれほど重要かは政治的な判断である。 しかし、営利を目的としないオープンソースの団体は、特許にある 技術を使っても、特許を侵害いるわけではなく、 特許として公開されている文章を参照しているだけなので、 問題は無いはずである(OpenCoresにとっては)。

オープンソース・ハードから生まれたアーキテクチャが 採用される日も来るかもしれない。